| 次回作「サックスと電話」 | 梅津和時氏とのコラボレーション |
| 日本映画へのオマージュ | もう一つのプロジェクト | 「small people with big hearts」|
 
 前号ではこれまでの軌跡を振り返ったが、今号は次回作を含め、将来の展望について紹介する。
 
■次回作「サックスと電話」■
 既にお伝えしたとおり、次回作「Sax Dan Talipon(サックスと電話)」の脚本はほぼ完成している。着想のきっかけとなったのは、フィルム・ノワールと呼ばれる、1940年代から50年代にかけてアメリカで制作された犯罪映画の数々だ(陰影に富んだ画面、虚無的な指向性、主人公の台詞が画面にかぶせられる「ボイス・オーバー」といった手法などが特徴で、ジョン・ヒューストン監督「マルタの鷹」、オーソン・ウェルズ監督「黒い罠」などが代表的な作品とされる)。
 映画の舞台は現代のクアラルンプール。ひょんな事から2つのグループに追われることになったジャズ・ミュージシャンが主役のアクション・サスペンスだ。撮影監督に予定されているのは、ベルトラン・タヴェルニエ監督の「今日から始まる(Ca commence aujourd'hui)」「ひとりぼっちの狩人たち(L'appat)」などで撮影を担当したアラン・ショカール。これは余談だが、ベルトラン・タヴェルニエ監督は、天才ジャズ・ピアニストのバド・パウエルをモデルとした映画「ラウンド・ミッドナイト」を手がけたことでも知られている。デクスター・ゴードンやハービー・ハンコックなどといった一流ジャズ・ミュージシャンが出演し話題となった。
 そして音楽を担当するのが、日本を代表するサックス、クラリネット奏者の梅津和時氏だ。監督は梅津氏を起用した理由について、先ず「何と言っても彼の音楽が大好きだからね」と語った。
 
■梅津和時氏とのコラボレーション■
 梅津氏との出会いは、実は監督のニューヨーク時代にさかのぼる。スキンヘッドで熱演していた梅津氏に、強い印象を受けたという。もっとも、この時は言葉を交わすこともなく、あくまでミュージシャンと一人の聴衆としての関係で終わった。後年、ある日本人の友人を通じて梅津氏を紹介されたときに、「もしかして」と思って尋ねてみると、やはりその時のミュージシャンだったことが判明したという。
 「彼の演奏を聴いていると、彼の音が『Jazz』の音だということがわかる。例えばオーネット・コールマン、アルバート・アイラーやジョン・コルトレーンといった『本物だけが持つ音』だよね。『Jazz』といってもスタイルのことじゃなく、その言葉を『彼自身の音楽』と置き換えてもいい」という監督は、梅津氏の音楽にとことん惚れ込んでいるのだ。「生活向上委員会」、「D.U.B.(ドクトル梅津バンド)」、「RC SUCCESION」、「シャクシャイン」、「こまっちゃクレズマ」などでの活動ばかりでなく、ブルース、ちんどん、ロックの他舞踏や韓国シャーマンとの共演など、その音楽性は幅広い。ジャズやワールドミュージックなど、音楽に造詣が深い監督ならではの人選と言えるだろう。
 「放火犯」で、インドネシアのミュージシャン、エンビー・C・ノール氏に音楽を依頼し、それがとてもいい結果を産んだことも、今回のコラボレーションに大きく影響しているという。「梅津さんは日本人だから、アメリカ人のジャズと同じになる訳がないし、そんなことは期待していないんだ。彼自身の持つ文化的なバックグラウンドは彼の音楽に現れているし、だからこそコラボレーションする意味もあるんだ」とも語っている。
 
■日本映画へのオマージュ■
 「特に溝口健二と小津安二郎だね。本当に美しいし、昔から何回も観ているけれど、未だに飽きないんだ。大島渚もいいし、最近では小栗康平が最高だ」と語る監督は、日本映画が大好きで新旧多くの作品を観ている。「梅津さんの音楽から滲み出る『何か日本的なもの』に期待している」という次回作は、実は日本映画に対するオマージュでもあるのだ。
 
■もう一つのプロジェクト■
 監督には現在進行しているもう一つのプロジェクトがある。イギリス文学の巨匠とも呼ばれるポーランド人小説家、ジョウゼフ・コンラッドの処女作「オルメイヤーの阿房宮(Almayer's Folly)」の映画化だ。19世紀のボルネオを舞台に、島の奥地の財宝を得て愛娘とともにヨーロッパへ凱旋することを夢想するオランダ人商人オルメイヤーの挫折を描くこの小説を、果たして監督はどのように映像化するのか。
 なんと主演に決定しているのは、「タクシー・ドライバー」や「パルプ・フィクション」などで知られる名優ハーヴェイ・カイテル氏だ。ある映画祭の時にこのアイデアを知った彼が、自分から「演らせてくれ」と言ってきたのだという。現在はプロデューサーの一人として、制作資金集めにも関わっている。
 オルメイヤーの妻を演じるのは、インドネシアの国民的女優で、小栗康平監督の「眠る男」にも出演しているクリスティン・ハキム氏。他にも、「Buai Laju Laju」出演のエマン・マナン氏、「放火犯」や「闘牛師」主演でウ・ウェイ監督作品の顔とも言えるカリッド・サレー氏も出演が決定している。
 
■「small people with big hearts」■
 これからどんな映像世界をみせてくれるのか、今後がますます楽しみなウ・ウェイ監督。インタビュー中は終始おだやかで、でもどこか力強さを感じさせる口調だった。最後に「僕はこれまで、『small people with big hearts』についての映画を撮ってきたし、これからもそれは変わらないよ」と言った監督の笑顔が印象的だった。
 
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◆ 関連ニュース:ウ・ウェイ・ビン・ハジサアリ監督
  梅津和時とコラボレーション
2005年4月16日
 
 
 
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