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| ペナン州立交響楽団・合唱団の常任指揮者 |
島野さんに聞く
あたたかいところが好き。
自由に仕事ができるペナンが好き。 |
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今年のはじめごろ、ドイツで勉強し、ヨーロッパでも日本でも名の知られた指揮者がペナンの州立オーケストラでタクトをふっていると聞いて、「不可能への挑戦だな」と感じた。マレーシアでは芸術やスポーツの指導は難しい。政府は芸術文化やスポーツの振興に大きな力を注いでいる。それでも、いくら芸術文化やスポーツをやっても飯が食えない。プロ野球やサッカー、プロゴルフのように一流選手になれば大金が得られるスポーツは別として、発展途上国においては、かっての東欧諸国や現在の中国のように国が英才教育システムをつくり、世界的な名声を得た人には名誉と富を与えるというのでもなければ、芸術文化やスポーツは育ちづらい。
「たいへんなことをやっているな」と感じていた。でも、オーケストラは指揮者によって変わる。指揮者の指導によって、平凡な演奏者たちが一流に変身してしまうこともある。そんな夢に向かって、情熱をもって取り組んでいるのだろう。一度、お会いして話を聞きたいと思っていた。 |
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なぜ、指揮者の道を選んだのですか?好きな指揮者、目標とする指揮者はいますか? |
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16、7歳のときに音楽に関する総合的な知識を学んでいるうちに指揮者を目指して頑張りはじめるようになりました。それまでに好きな指揮者もいたし、好きになれなかった指揮者もいました。勉強をしているうちに「好きとか好きになれないということはどうでもいい、どの指揮者からも学ぶべきだ」ということが見えてきました。 |
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これだけの経歴がある島野さんが、なぜペナンにやってきたのですか? |
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あったかいところに行きたかったから、というのもありました。
人生の半分をウィーンで勉強し、欧州で仕事をしてきました。欧州に日本人の音楽家は大勢います。しかし、ヨーロッパで名声を博すまでいくのは本当に難しい。日本人、アジア人には限界があります。このままでいいんだろうか、悩みました。欧州以外に行きたいと思うようになっていました。そんなときにペナン州から誘われました。そして、自分はアジアの人間だからアジアを拠点にしてもいいじゃないかと思いました。
どこに行っても、どんな仕事であっても、何の制約もない、自由に仕事ができる場所が欲しかったということもありました。
わたしの知る限り、マレーシアのクラッシック音楽のレベルはお世辞にも高いとは言えないと思います。それに、コンサートにやってくる聴衆のマナーのレベルが低すぎます。もっとも、日本人の聴衆だって、タキシードにドレスのカップルが、交響曲の楽章の間合いに拍手をしているし、乳幼児をつれてコンサートや公演会にくる日本人の若いファミリーもけっこういますから、他国のことは言えませんけれど。
できるだけ多くの地元の人々にクラッシックを知ってもらいたい、楽しんでもらいたい。そのための教育が必要だと思います。
クラッシック音楽は堅苦しい、制約が多いというイメージを演奏者や聴衆の皆さんに持たれるのはいいことではありません。クラッシックを楽しんでもらいたい。交響曲の間合いの拍手には戸惑いましたが、すばらしいと感じて拍手をしてくれるんです。演奏しているほうにはうれしいことです。
聴衆の皆さんのために、クラッシックを楽しむためのマナーを漫画で分かりやすく説明しています。携帯電話の電源を切ったり、演奏中におやつを食べたりしない、泣いたり、騒いだりする子供はほかの人たちの迷惑になる、といったことをおもしろく描いています。 |
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音楽の普及というか、底辺拡大のために、具体的にどんなことをやっていますか? |
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ペナン州のトレーニング・オーケストラ、ジュニア・オーケストラ、オーケストラアカデミー講習会、室内楽ワークショップなどを手がけています。また子供たちの音楽教室を開いて、子供のうちから音楽に親しんでもらう機会を増やそうとしています。それから、ホテルや大きなパーティーなどで、数人の奏者による室内楽の機会も増えています。音楽に興味をもつ若い人たちが増えて、育っていってくれると思っています。 |
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島野さんの指導で、ペナン州立交響楽団・合唱団のレベルが上がったと聞いています。指揮をしていてうまくなったと感じますか? |
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ペナンに来て二年近くになります。オーケストラの全員が頑張って、ずいぶん実力をつけてきたと思います。もっともっとレベルがよくなっていくと思っています。
ペナンのいいところは人々の音楽への関心が比較的高いこと、そして自由な気風があって、フレキシブルにできるということですね。演奏する曲目を選ぶのにも制約がほとんどない。だから、演奏する団員も楽しい。
オーケストラにとって一番の励みは会場が聴衆の皆さんで埋まり、演奏が終わったときに割れるような拍手をもらうことです。できるだけ多くの皆さんにコンサート会場にきていただきたい。客席がすべて埋まっているのを見ただけで、団員は「よーし、頑張ろう。いい演奏をしよう」と思います。もちろん指揮者も同じです。いい演奏をしたときの聴衆からの拍手や歓声が、次への大きなステップになります。 |
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●取材を終え
島野さんの奥さんの更織さんはピアニスト。背の高い島野さんと小柄な更織さんのコンビは楽しい。どちらかと言うと、更織さんはマネージャーって感じがする。話をしていた感じでは、指揮者というよりも指導者という感じがする。クラッシックへの情熱があって、その情熱がペナンの団員の皆さんにうまく伝わっているのだろう。ビジネスライクに割り切って短期的に成ハをだすタイプではなく、五年後、十年後、二十年後を見すえ、クラッシックを、そして音楽をいかにプロモーションしていけばいいかを真剣に考えているように見えた。夫唱婦随ってのもうらやましい。 |
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| <島野泰史(やすふみ)さんのプロフィール>
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ペナン州立交響楽団・合唱団の常任指揮者である島野泰史(やすふみ)さんは静岡県袋井市出身で32歳。15歳のときにクラシック音楽の本場ドイツに行き、音楽家への道を歩きはじめた。演奏者としてはヴィオラが専門。1998年、ウィーン市立音楽院指揮科を首席で卒業。このときに教授会全員一致で最優秀賞を受賞した。その後、欧州各地のオーケストラで指揮活動を行い、日本でも浦和フィル、群馬シティーフィル、瀬戸フィルなどでタクトを振っている。2000年にはヨハン・シュトラウス・オペレッタ・ヴィーン/カッセルの指揮者に就任。欧州各地の市民レベルでの文化・芸術活動にも力を注いできた。2001年にはスペインのカルタヘナで行われたカルタヘナ国際音楽コンクールで、満場一致で最高ハを受賞している。
2003年4月にペナン州立交響楽団から強い要請を受け常任指揮者となった。 |
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