審査員たちはがっかり
アジア太平洋映画祭出品の
日本映画 |
1日に閉幕した第50回アジア太平洋映画祭(APFF)。既にお伝えしたとおり、韓国とマレーシアの活躍が目立った。一方、日本映画は辛うじて「戦国自衛隊1549」が最優秀美術賞を受賞したにとどまった。今回日本から出品されたのは、上記の他「ビートキッズ」、「電車男」の計3本。これら日本映画に対し、APFFのマレーシア人審査員(仮にA氏としておこう)から興味深い話を聞いたのでご紹介しよう。
審査時のスクリーニング前、アジア各国からの審査員は一様に、日本映画に対し期待していたのだという。「どの作品も最初の10分くらいまでは良かった。例えば『戦国自衛隊1549』のオープニング。『何が起こるんだろう』とワクワクした」と語るA氏。しかしその期待はすぐに裏切られる。「他の作品も一緒で、本当にがっかりした」という。A氏によると、落胆したのは同氏に限らず他の審査員も同様で、「あんなにお金を使って何をやっているんだ」という辛辣なコメントもあったという。
 |
日本から出席した女優大沢さやかさんの
和服姿は注目の的だったが……。 |
仕事柄、マレーシア人の映画監督と接することがあるのだが、今まで話をした監督は皆一様に、日本映画への熱い想いを語ってくれたものだ。今回は「セペッ」を巡る騒動でAPFFには出品しなかったヤスミン・アーマッド監督は「生まれて初めての映画は、6歳の時に観た勝新の『座頭市』、好きな監督は小津安二郎、今村昌平、山田洋次等。黒沢清、北野武」と語っていた。また本紙でもインタビュー記事を掲載したウ・ウェイ・ビン・ハジサアリ監督が「最も尊敬する」のは溝口健二で、他に黒澤明、小津安二郎、大島渚、小栗康平などの作品を好んで観るという。
もちろん、筆者が話をしたのは映画業界の人、しかも監督であって、一般の人達がここまで日本映画に熱を上げているとは言い難い。ただ、今挙げた監督以外にも、マレーシアで映画に関わる人々が、日本映画に対し熱い想いを抱いているという感触があったことは確かだ。
今回のAPFFの結果から、「現在の日本映画はダメだ」という結論を出すことはもちろんできない。小津、溝口や黒澤が活躍した日本映画の全盛期とは比較できないが、日本国外でも評価される監督が全くいない訳ではない。問題は、APFFに出されたラインアップにあるのではないか。
考えられる原因として、APFFが日本のメディアで報道されることはほとんどなく(*1)、知名度もカンヌやヴェネチア、ベルリンといった映画祭に比べたらゼロに等しいということが挙げられる。つまり、出品して受賞しても「ハクがつかない」と思われているのだろう。
石坂健治氏は「Internet Photo Magazine Japan」(*2)の連載「新亜州電影紀行」で、APFFがいかに日本のメディアから冷遇されてきたか、具体例を交え指摘している。一方、他のアジア諸国ではAPFFでの受賞がいかに名誉とされているかを挙げ、「そのギャップの大きさは意外に大きい」としている。
アジア映画ブームと騒がれて久しいが、映画における日本と他のアジア諸国の関係は「相思相愛」からほど遠い。今回のAPFF審査員たちの日本映画に対する落胆ぶりも、その一端を示しているのではないだろうか。
|
<注>
(*1)インターネット上では、韓国映画や香港映画のサイトで部分的に取り上げられていた。また、マレーシアおよびアジアのニュースを扱うサイトでも一部報道されていた。
(*2)URLはhttp://www.ipm.jp。APFF自体の問題についても指摘がある。 |
<蛇足>
今回のAPFFの報道をめぐり気がついたのだが、最優秀作品賞に輝いたカン・ジェギュ監督の「ブラザーフッド」の作品名を「タエグクグイ」などと表記しているメディアがあったのには驚いた。「太極旗」のハングルをローマナイズすると「TAE
GUK GI」となるので、まあそう読んでしまう気持ちもわからなくはないが、不勉強と言われても仕方がないだろう。例えば最初の音は「AE=AとEの二重母音」なので、強いて表記すれば「エ」か。日本語にはない音とはいえ、二重母音を「アエ」などと分割してしまうのは暴挙ではないか。
しかも、筆者が気がついた範囲では、1社のみならず2社までもがこの表記をしていた。とは言っても、片方がもう1社(某インターネットメディア)の表記をそのまま頂戴しちゃったのかも知れないが。 |