「同情に値しない愚かさ」
 海外を旅行中、あるいは滞在中の日本人が事故や事件に巻き込まれている。よく見ると、どれも、海外で生活していれば、だれでも注意する、いわば常識で防げる事件と事故ばかり。平和と安全は国は保証してくれるものと信じ、善意、好意で接すれば、人は心を開き、善意、好意で接してくれると信じている日本人だけがもつ特殊な感覚で海外にやってきた人たちだと思わざるを得ない。
亡くなった方々には慎んでご冥福をお祈りするが、わたしたちはこの方々の死を他山の石としないように、気を引き締める必要がある。

1.海外でよくある典型的な詐欺事件
 タイのバンコク近郊のパトムタニ県で今年三月貿易商の小島善雄さん(53)とベンチャー企業社長の久金辰也さん(52)の二人が頭部に銃弾を受けて指導していた事件で、タイ国家警察は5月6日、殺人などの疑いでマレーシア人の財務コンサルタント、ジョージ・フェルナンデス容疑者(64)と知り合いのタイ人を逮捕して取り調べをはじめた。タイ人は死体の移動に関わった模様。
 フェルナンデス容疑者の自宅浴室からは二人の血痕が見つかり、さらに現金五百万バーツ(約千五百万円)が見つかった。
 小島さんらはたびたびバンコクを訪れてフェルナンデス容疑者と面会していたとみられ、世界銀行の幹部になれば高額の融資が受けられるという詐欺話をもちかけられていた模様。二人は8千万円を所持してタイに入国したと伝えられている。容疑者の自宅からはフェルナンデス容疑者とブッシュ米国大統領などが一緒に写った写真が残されていた。
 有名な政治家や財界人と一緒に写った写真をもちあるいて、「自分は大臣の××と親しくて、わたしの力になってくれる」、「(大企業の)○○社の経営者と親しくて、一緒に仕事をしている」などと言いながら、儲かりそうな投資話をもちかける自称コンサルタントがいる。タイにも、インドネシアにも、もちろんマレーシアにもいる。現地の人であることもあれば、日本人であることも多い。今回のように第三国人ということもある。
 東南アジアに数年住んでいれば、これと似たような話を一度や二度は耳にする。ようするに、典型的な詐欺のパターンだ。冷静に考えれば、ブッシュ大統領が紹介してくれて、世界銀行の役員になれるなんて話を、50歳以上にもなった事業家が信じる方がおかしい。
 数千万円といえば、日本以外の世界中どこでも殺されても文句の言えない金額だ。

2.日本人女性がアメリカで行方不明
 アメリカのアリゾナ州北西部のココニノ郡で5月8日、旅行中の日本人女性「ハナムレ・トモミ」さん(34)=漢字表記不明=が観光地のホテルを出たまま行方不明になった。ホテルは巨大渓谷で知られるグランドキャニオン国立公園の近くにあり、ナハムレさんはホテル近くに車を止め、約5キロはなれた同公園内の滝に向かって一人でハイキングに出かけたまま帰ってこない。ホテルの室内には旅券や航空券が残されていた。
 道に迷った可能性があると言われているが、一人でハイキングコースを行くなら、標識がしっかりしていることを確認していくか、地図とコンパスくらいはもっていくのがふつうだ。約5キロ、たいした距離ではないという油断があったのかもしれない。
 しかし、常識的には危険に巻き込まれたと見るべきだろう。「わたしは大丈夫」と絶対に自分には危険が襲ってはこないと信じている無防備な日本人女性の典型的な事件遭遇パターンだ。大自然の中で会う人は、みんな善人だと信じている。日本でなら90%以上は安全でも、日本以外の国では90%以上は危険だ。よくて金品を強奪される。ふつうでレイプ、悪くすれば殺される。ヨーロッパでもオーストラリアでもよくあるパターンだ。

3.中国で交通事故死
 中国山東省即墨市近くの国道で5月3日夜、5人が乗った車が道路脇の樹木に衝突して、日本語学校教師で大分県出身の男性(27)と中国人一人が死亡、大阪府出身の会社員(23)が警鐘を負った。3人は後部座席に乗っていた。同省では昨年6月にも大型バスと乗用車の衝突事故で日本人3人を含む5人が死亡している。
 地元の運転手だから地理にも明るいし、道路事情も詳しい、そして、運転も慣れている.だから、安心と思ってしまう。それは自分が運転するよりは安心といったレベルでしかない。マレーシアでも、タイでも、フィリピンでも、シンガポールとブルネイをのぞいた東南アジアでは、バスに乗っても、タクシーに乗っても命がけだ。もっとも、生活が豊かになってきたマレーシアは、他の国よりもずいぶんよくなっている。新興自動車国の中国の道路事情、運転事情が、わたしたちの常識を遥かに超えたものである可能性は高い。

4.麻薬密輸の罪でオーストラリアで服役、14年ぶりに帰国
 麻薬を密輸しようとしたとしてオーストラリアで逮捕され、禁固20年の実刑判決を受けてビクトリア州の刑務所で服役していた勝野良男受刑者(47)=北海道出身=が5月11日、事件から約14年ぶりに仮釈放された。勝野さんは兄ら4人と一緒に逮捕され、勝野さん以外の4人は2002年11月に仮釈放されており、主犯格とされた勝野さんだけが残されていた。
 5人はおいずれも「麻薬の運び屋に仕立てられた」として無罪を主張していた。勝野さんは今後も無罪を認めさせるための活動をつづけるという。
 海外旅行中に、知らない人だけでなく、知り合いの外国人に荷物を預かってほしいと頼まれることがある。他人の荷物を自分のバッゲージとして航空機の載せれば、中に何が入っていようと、自分の荷物と見なされてしまうのは常識だ。ふつうの日本人は犯罪者とは縁遠く見える。だから、犯罪者たちはふつうの日本人を利用しようとする。
 知らない人が「荷物を××まで運ぶのを手伝ってくれ」と頼まれたら、それが、どんなに信用できそうな人でも、たとえ、かわいい女性であっても、いぶかしく思うのがふつうだ。知っている人に頼まれても、中に何が入っているか分からないスーツケースや段ボール箱は要注意だ。中身を確かめ、所有者の氏名を明記した表示があっても危ない。

 こうして見ていくと、どの事件、事故も、海外ではごく当たり前の常識を知らないで巻き込まれていることがよくわかる。海外で生活しているわたしたちから見れば、「同情に値しない愚かさ」が原因になっている。
 見知らぬ人に、飲み物をもらって飲んでしまい、眠っている間に貴重品を盗まれたなどという話もよくある話だ。「いかさま賭博」の手口もみんながよく知っていることだ。それでも、被害に遭う日本人はあとを絶たない。海外に出ると、日本人の多くが、性善説主義者になってしまう。日本で見知らぬ日本人に話しかけられたらどうするか?小学生の子供たちに教えていることをよく考えてみよう。

 
     
 
 
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