老後を海外でのんびりとすごそう。日本にいた頃のしがらみを忘れて、もう一度人生をやり直そう。そして、自分の心の赴くままに生きていこう。そう考えて定年後の生活設計の中に、東南アジアで長期滞在してみようという中高齢の人たちが増えている。
「これはビジネスになりそうだ」と思いついて、7、8年前から、日本では大手旅行会社から、東南アジア専門のマニアックな旅行会社まで“ロングスティ下見ツアー”を立ち上げている。ただし、旅行会社は実際にロングスティをはじめようという段階になると利益をほとんど生まない、トラブルが発生しやすいこのビジネスに対応すべく、現地に、ロングスティに詳しい受けの業者と契約している。
ロングスティンに直接関わる旅行業者と受けの業者だけでなく、ロングステイを推進するはずの経済産業省管轄の財団法人「ロングステイ財団」も、関係国の観光省やその出先機関、出版マスコミやテレビメィアも、そして、ロングスティを考え実行しようとしている人たち自身にも様々な問題が持ち上がっている。
ロングスティを新しいビジネスとして捕らえている人たち、これから海外での生活をたのしもうという人たち、海外暮らしになじみの薄い団塊の世代の人たちが関わるだけに試行錯誤が繰り返され、「産み(創生期)の苦しみ」がもうしばらくつづくのだろう。
■旅行業者と受けの業者
受けの業者の多くは日本人であり、自称ボランティアという人が多い。現地のイミグレーションや観光を管轄する行政府との関係を強調する人、日本人会などの公的団体を舞台につかう人が多い。テレビや出版社などはこの国の行政府の出先機関などの協力を得て、ロングスティ創生期に活躍している前述のようなコネクションをもつ自称ボランティアや、一家言をもつパイオニア的存在のロングスティアーにスポットを当ててムードを煽っている。やらせに近い番組も多い。共産党政府が管理している中国のマスメディアのように、いいことばかりを取り上げて、安全で健康的に暮らすためにほんとうに必要な情報を「ネガティブ・インフォメーション」といって、排除しようとする。
在マレーシアの日系の公的団体のロングスティを議論するグループでも、注意が必要なこと、日本の常識が通用しないこと、危険なこと、不愉快なことなどを伝えるべきだと主張する人がはじき出されたという。声が大きい中心的役割の人たちは何が何でもとりあえず「ロングスティ」のメンバーを増やそうという発想で、そこにまやかしがあっても目的のために目をつぶろうと考えたのだろうか。
12月11日付けの朝日新聞に,ロングスティの人気目的地のひとつとして注目されているフィリピンのセブ島で、介護システム着きの住宅の販売をしている業者が土地の取得ができなっかったという理由で、土地代金を払い、住宅を建設したロングスティの人々が、土地も家屋も元の地主である大手開発業者に返還を迫れれているという話だ。もちろん介護サービスもないし、実際の土地代の原価は購入価格の6,7分の1だったことも分って大混乱している。これをマスコミは業者だけの問題として処理しようとするが、この話に乗ったNPO法人や財団、政府機関、旅行会社もあるはずだ。胡散臭い業者を、あたかも崇高な目的を持った営利を度外視した企画として、ロングスティを夢見る人たちに錯覚させる役割を果たした機関があるはずだ。彼らこそ糾弾されるべきではないか。
マレーシアでも、大手旅行代理店の某社が、政府や日本人会との関係を誇示し自分は一流企業の駐在員だったと自負する自称ボランティアのAさんが、日本でセミナーを開いて信用させ、下見ツアーをA さんの元に送り込んでいた。Aさんはロングスティビザの取得を強要したり、コンドミニアムの購入を強要していた。とくにコンドミニアム購入に関して、現地の情報を知らない人たちに相場よりも数万リンギ高い物件や見当はずれの場所の物件を売りつけていた。
住み始めて1、2ヶ月すれば、場所のよしあしから相場より高いことまで分ってしまい、「Hにだまされた」という騒ぎになる。KLでもペナンでも何人もの人が「だまされた」と叫んでいた。しかし、セブ島の事件のだました業者が言うように「安く仕入れた物件を高く売るのが商売」であって、契約書に自筆でサインしてある以上,正規の不動産売買で、第三者がとやかく言うようなことではない。
普通の人々は「一流企業のエリートだったAさんが悪いことをするわけがない」と考え、そこに政府機関や財団の人間がいて、大手旅行会社が窓口になっている。挙句、「自分はボランティアでやっているNPOだ」、「日本人会とも関係があった」などと自己紹介する。わたしはAさんをその気にさせてしまったのは、大手旅行会社であり、政府機関や財団であり、そして、Aさんを私利私欲のない人と祭りあげて紹介したテレビ局や出版社だと思う。
政府機関や財団は、現地の事情をよく説明し、注意すべきことを指摘し、ロングスティのための作業を慎重に進めていくようにアドバイスするのが義務ではないだろうか。大手旅行会社は「だまされて損害をこうむった」という人たちに何らかの償いをすべきではないのか。『週刊ポスト』もせっかく様々な問題をあぶりだしたのだから、もう一歩突っ込んで責任の所在も糾弾するべきだろう。
それにつけても、人を信じよう、話せば理解しあえる、人類みな兄弟といった性善説を子供のころからたたきこまれた団塊の世代の人たちは、日本にいるときは日本に住むアジアの人々を一歩も二歩も退いて警戒していたのに、海外に出るととたんに片言の日本語で話しかけてくる現地の人たちと友達になれると信じてしまう。おまけに、海外で会った日本人をまったく抵抗感なしに100%信じてしまう。
初めて会った人が、観光名所に連れて行ってくれたり、食事に連れて行ってくれたりすると大感激して信じきってしまう。冷静に考えてください。世界中の誰が何の見返りなしに身銭を切って、時間を使って親切にするでしょう。 必要以上に親切にされたら、まず、何か魂胆があると疑ってみるのが、海外でも日本でも安心して暮らす秘訣です。 |