3月10日にプロ野球西武球団がアマチュアの2選手に裏金1300万円を支給していた事を公表した。2005年当時明治大学の一場投手が巨人、横浜、阪神から食糧費等の名目で裏金をもらっていた事が発覚し、三球団のオーナーがそれぞれ辞任する騒ぎがあった。そのときに出された「倫理行動宣言」後も、裏金が渡されていたことが判明した。
裏金を受け取っていたのは、早稲田大学3年の清水勝仁選手(21)と東京ガス・木村雄太選手。木村選手には「宣言」以後、金銭供与を打ち切っている。しかし、木村選手は秋田経法大付属高校3年1月から毎月30万円ずつ支払われていた。木村選手は除名なしで東京ガスのチームが主要大会への出場をしばらくの間自粛する。清水選手は早大野球部を大部処分になった。クラブ・チームか社会人チームに所属して再起を図る。日本プロ野球機構はドラフト制度の抜け道となっている希望枠を廃止した。
4月12日に日本高校野球連盟(高野連)が清水選手が在籍した専大北上高(岩手県)に同校の校長や学校法人の理事長などを呼び事情聴取を行った。学校側は高橋利男前同校野球部コーチが清水選手と西武との間の密約にも深く関わっていたことを認め、「清水選手の家庭の経済状況が厳しく、早大卒業後に西武に入団することを前提に金銭の援助を始めたという。
また、同校では野球だけでなく、卓球、体操、柔道などの各運動部を対象にスポーツ特待生制度があり、選手の中学時代の実績によって入学金や授業料などが減免される制度があり、その4割を野球部が占めていた。こうしたスポーツ選手の特待生制度は、生徒数減少を食い止めるために必要で手っ取り早い「有名校化戦略」として、全国の私立高等学校で行われてきた。注目度の高い野球、サッカー、バレーボールなどで知られた有名スポーツ校の有名選手の多くはこの制度の恩恵を受けていたと考えられる。同じことは、大学スポーツでも大なり小なりあったように感じられる。
野球部員の何割かが特待生として学費の減免を受ける。これでは金額は小さいがプロと同じだ。高校生も大学生も、野球有名校の選手たちは半ばプロ化しているといっても過言ではない。それだけでなく、プロ球団から直接多額の金銭を受け取っていた。五十歩百歩だが、どちらもあきれてものが言えない。
日本学生野球憲章では、いかなる名義名目であっても選手、部員であることを理由に支給されたり貸与されたと見なされる学費、生活費などの金品を受け取ってはいけないと規定されている。野球にしろサッカーにしろ、プロ・スポーツとして選手個人とチームとの間で大金が動くスポーツでは、自分のチームを強くしたいというプロ球団からの金銭的な誘惑があることは、3つのプロ野球球団から小遣いをもらっていた明大の一場選手の事件で明らかになった。
プロ球団は選手よりも先輩後輩の関係がある野球部コーチや監督、あるいは家庭の経済状況によっては親との交渉から入る。数年前に巨人に入団した大物選手も、親のやっている企業に多額の裏金が支給されたという噂がささやかれた。
もともとスポーツとは、野球にしろサッカーにしろ子どもが好きではじめるパターンが多かった。子どもが病弱だから少しでも健康になってもらおうという親心ではじめるスポーツもある。親がやっているのを見よう見まねでやりはじめるスポーツもある。そうこうしているうちに国内で一流選手になりプロを目指すというのがふつうの感覚だった。
それが巨人の原監督が高校生の頃から、全国から有望な選手を集めて甲子園制覇を目指す私立高校がではじめ、親が自分の子どもをプロにしたくて、つまり、金銭目的でスポーツをやらせる風潮ができてきた。その地方で生まれて育った野球少年たちが地方の代表として甲子園に行くというふつうのパターンから、地縁のない子達ばかりの全国区の代表が出るようになった。
自分の子どもを有名にするために、子どもを野球留学させるのがふつうになった。県内の才能ある野球少年を集めた有名校でも、親たちの間で自分の子をレギュラーにするために監督やコーチに付け届けをする。母親が監督やコーチと特殊な関係になる。レギュラーになれない子どもの親は「どうせ選手に選ばれないなら」と選手や監督、コーチの不祥事を暴露して一蓮托生にしてしまう。そこに大学や社会人チーム、プロ野球からの誘惑が加わるから、スポーツ名門校の監督、コーチの中には不届きな者も多くなっている。
一部の私立高校では、高校野球や高校サッカーはアマチュア・スポーツという意識がなくなってしまった。
専大北上高校野球部は高野連を除名される。公式試合はもちろん、練習試合の相手もいなくなる。83名の部員は野球という土俵には一定期間、上ることが許されない。野球だけしかない十数年の人生が失われることになる。当然、授業料の減免はなくなり、一般の生徒と対等に勉強に励むしかない。つらく絶望的な生活がはじまる。学園理事長は「83人の野球部員の夢と希望がかなうようにお願いしたい」と教育者らしいことをいまさらになって願い出ている。
このニュースを聞いて真っ青になっている私立高校経営者、野球部指導者、野球部員、そしてその両親は多いだろう。「なぜ、野球だけがこんなに厳しいのか」という声もあるが、ルールとマナーを守るからスポーツは成立する。ルールを破った以上、その「スポーツをやる資格はない」と処分されても仕方がない。人生に挫折した選手たちはこの道を選択した親を恨むしかない。巻き添えになったふつうの野球部員は、そんな学校を選んだ身の不運を嘆くしかない。誰が悪いのではない、野球界全体が腐っているのだ。「野球をやっている子どもたちには罪はない」、本当だろうか。彼らにも彼らの意思があって、自分で決めた部分もあるのだ。ルールに反するという意識がなくても、やってしまえば罪一等を減ぜられはするが、罪と罰からは逃れることはできない。
野球がすきとはいっても、学生が勉強するのは当たり前だ。野球の道が閉ざされても、野球しかできない人間ではなく、多様な人生を送ることができると考えればいい。プロになって挫折するよりも、高校時代に挫折して、早くに敗者復活戦に参加するほうがらくだと思う。
地元地域の公立高校で劣悪な環境を耐えて頑張って野球に励んでいる子どもたちのほうが、金銭にダーティーな野球少年たちよりも数倍も多い。高校野球も原点に帰るほうがいい。公立高校が甲子園に出るのが難しくなっているのは以上だ。沖縄県立八重山商業みたいな地元の子どもたちばかりのチーム、高校が活躍する。最高だと思う。 |