日本人学校以外の、インターナショナル・スクールや現地の私立学校にそれぞれ何人の児童生徒が通っているかは定かではありませんが、減少傾向にある日本人学校とは対照的にふえる傾向にあります。
子どもたちの学校選びの選択肢がふえることはいいことだと思います。それぞれの子どもにもっとも適した学校を選ぶことができます。その意味では日本にいて日本の学校制度の中にあるよりは選択の幅が大きく広がるのです。その意味でも、マレーシアで少年期を送っている子どもは幸せだと思います。ご両親も、日本人学校だけが唯一の道と考えないで、国際化が進む日本の社会で生き抜く知恵を授けてやってほしいと思います。
ただ、インターナショナル・スクールや現地の私立学校に通っている子どもは、日本語が不便になったり、日本の歴史や文化、物事の考え方などがおろそかになりやすいことは否めません。自分の子どもが次第に、日本人としてのアイデンティティーを失っていくのはちょっと悲しいものがあります。やっぱり、「きちんとした日本語で読み書きができてほしい」と思うし「日本の歴史や文化を学んでほしい」と思うのが親心だと思います。
シンガポール日本人学校には日本語補習校が併設されていると聞いています。世界の多くの都市に日本語補習校があります。日本人学校に行っていない子供が、きちんとした日本語を学び、歴史や文化を学ぶことができたら、真の国際人である日本人が誕生します。
クアラルンプールやペナンの日本人学校に日本語補習校が付設できたら、子どもたちの選択肢が広がるのです。先生が足りないなら、定年後をマレーシアでスティしている中高齢の皆さんのボランティアを期待することもできます。子どもにとってもおじさんやおばさんにとってもすばらしい体験ができると思います。
オーストラリアにいた頃に、両親が日本人なのに日本語がまったくできない高校生や大学生が数人いました。話はできても読み書きができない子もいれば、日本語を習い始めたばかりの外国人のような片言の日本語しかできない子もいました。日本語がまったくできない子は、家庭でも両親が意識的に英語のみで会話をする家庭でした。両親も子どもも日本人であることを捨て、骨をうずめるつもりでオーストラリア人の社会の一員になりきろうとしたのでしょう。そのくせ日本人相手の商売をしていましたから、金儲けとポリシーは違うということでしょう。
けれども、オーストラリアではわたしたち日本人は例え永住権(PR)を取得しても、イギリス系の国民の目にはどこまでいってもアジア人でしかありません。白豪主義のオーストラリア人にとって、中国人も日本人も韓国人もただのアジア人にすぎません。働き者とは縁遠い、どちらかと言うと遊ぶため、生活をエンジョイするために働いているオーストラリア人にとって、賃金がやすく働き者の中国人、日本人、韓国人は、自分たちの職域を犯す不埒者ということで締め出してしまおうとしたことがあります。オーストラリアは白人の世界という考えが「白豪主義」と呼ばれました。
もちろん、先進国であり、オーストラリアよりもGDPが高い、一人当たりのGDPもはるかに上を行く日本人だからといって、白人扱いしてくれるなどということはありません。むしろ、日本人だということが分ると、高齢のオーストラリア人は第二次世界大戦時の恨みをこめて、稀にですが、少し前までは生卵をぶつけたりしてきました。
それでも、わたしがオーストラリアにいた15年以上前までは、英語と日本語の二ヶ国語を流暢に話すことができる人はビジネス社会では引っ張りだこでした。しかし、英語しかできない日本人はオーストラリアの社会で、陰湿な人種差別のある国でどうやって生きていくのだろうと他人事ながら心配になりました。
この頃にパースの総領事館のある領事が、「(日本人学校のない)アフリカのある国で、自分の子どもはインターナショナルスクールに通って、週末には日本語補習校に通っていました。子どもにとってはとてもよかったと思います。」としみじみと言っていました。外国での暮らしが長い外交官の家族にとって英語力は、学校でも、地域社会で生活していくうえでも必要なことです。一方で、日本人である以上、日本語の読み書きはきちんとできて欲しい。日本の歴史や地理を学び、日本の文化を知ってほしい。日本人としてのアイデンティティーを忘れないで欲しい。ビジネス社会にせよ外交官の世界にせよ、国際人として生きていく日本人にとって必要不可欠な勉強だという認識だったんだと思います。
お父さんかお母さんのいずれかがマレーシア人の子どもにとって、マレーシア人として生きていくか、あるいは日本人として生きていくかによって考えかたは違うと思います。でも、子どもが国籍をチョイスする年齢になるまで、どちらを選んでもいいような教育をするというのはいいことだと思います。
ここマレーシアでも、次代の日本にとって重要な可能性を秘めた子どもたちが大勢、インターナショナルスクールや現地の学校に通っています。日本の未来を明るくしてくれる若者たちです。外務省も文部科学省もそういう子どもたちが100人の単位でいることに注目してください。彼らの可能性をもっともっと広げるために、必要な教育制度を整備して欲しいと願っています。 |