独立記念日に思ったこと
 8月31日、マレーシアは独立50周年を迎えた。半世紀にわたって、この国はよき指導者に恵まれたとつくづく感じた。そして、それぞれに親日家であってくれたことがうれしい。

 初代のトゥンク・アブドゥル・ラーマン(1955〜70)、二代目のアブドゥル・ラザック(1970〜76)、三代目のフセイン・オン(1976〜81)、四代目のマハティール(1981〜2003)、そして、現在の五代目アブドゥラ・バダウィと、それぞれにマレーシアという国を愛し、マレーシア国民にとって最善の選択をしてきた。それぞれに宗教が異なり、民族性もひじょうに個性的なマレー人、中国人、インド人、そして、少数民族などを上手にまとめている。

 日本との関係は独立のその日に、日本政府は独立を承認し、日本とマレーシアの外交・友好関係がはじまった。以前に、『日馬プレス』に掲載したが、初代首相のトゥンク・アブドゥル・ラーマンは日本サッカーの大恩人でもある。戦前からマレー半島に住んでいた森敬湖さんとの親しい関係を通じて、大の日本びいきだったという。日本にも岸信介首相(当時)の訪問に応えて、日本を公式訪問している。

 マレーシアのような多民族、多宗教国家は民族間抗争や宗教抗争が起こりやすい。典型的な例が旧ユーゴやスロバキアだろう。ボスニア・へレツコビナでは昨日まで仲のよい隣人同士が血で血を洗う殺戮をくり返した。コソボでも同様だった。アフガニスタンも多民族、多宗教国家だ。アフリカの国々の状況は言うまでもない。

 どの国でも指導者が自己の利権を守るために宗教を利用している。急速に発展している中国も多民族、多宗教国家であり、一部の共産党幹部や地方自治体の高級官僚たちが私利私欲に走り、利権の獲得保持に走り、国民の財産などを食い物にしている。中国は四千年の昔から、国民のほとんどが、自分さえよければ、周りの人も国もどうなってもかまわないという国民性のもち主だ。国家も同様で、国民に富をあまねく平等にいきわたらせるはずの共産主義の理想は忘れさられている。

 アフリカや旧ソ連、中央アジアの国々など、多くの発展途上国が独立を果たしたあと、独裁国家となって国の財産・資源を食い物にし、国民に多大な犠牲を強いて、植民地時代よりもひどい圧政によって、発展できないどころか、反政府グループとの内戦によって国民は悲惨な状況に追い込まれている。

 マレーシアは第3回総選挙直後の1969年5月13日、中国系住民とマレー系住民との間で衝突があり、多くの死傷者を出した。その反省から、政治的にマレー人の特権が確認された。民族間や宗教観の対立を防ぐために、歴代首相はたいへんな思いで舵取りをしていると思う。外国人としてみていると、実に不平不満を押さえつけて、よくコントロールしていると思う。わたしたちがマレーシアに住んで感じている安心感の原点はそこにある。

 マハティール前首相はマレー人こそがマレーシアの真の国民であり、マレーシアの近代化、経済発展の中核とならなければいけないと考え、教育、行政などで様々な特権を与えた。「ブミプトラ政策」によって、社会的下位にあったマレー人の地位は向上し、経済力を付けていった。同時に、行政改革や汚職追放に乗り出した。また、第二次世界大戦後の日本の近代化や経済発展、韓国のセマウル運動を見習いマレー人に教育を施し、訓練し、特権を持つに値する能力にするために「ルック・イースト政策」を掲げた。

 ともすれば強引に見えるマハティール前首相の手法は欧米諸国からは「独裁的」、「非民主的」という批判もあったが、ブミプトラ政策の存在によって、中国系住民とマレー人との民族間の対立の根は絶たれている。欧米から見れば、非民主的に見えることであっても、アジアにはアジアの価値観があり、マレーシアにはマレーシアの民主主義があるというつよい信念で欧米諸国に論戦を挑んでいた。また、イスラム原理主義グループの摘発も厳しく強引に行ったため、米国などから厳しい批判の声があがったが、毅然としてやりとおした。9.11の同時多発テロ以降、マハティール批判の声は消えた。親日家のマハティール前首相は自分の息子を日本の大学に留学させている。

 アブドゥラ・バダウィ首相の亡くなった前夫人のエンドンさんは、お母さんが前述の森敬湖さんの奥さんや『日馬プレス』に連載されていた川内光治さんの奥さんと姉妹で、日本人だ。アブドゥラ首相は、エンドンさんがご存命の頃はよく日本にも行かれて、エンドンさんの従姉妹たちいわく「アブドゥラ首相は日本の侘び(わび)や寂び(さび)が分る数少ない外国人」と言っている。

 「マレーシアは軍や警察の銃口が自国民に向けられていない数少ない途上国」だということができる。それは、何にもましてすばらしいことだ。独立50周年。若い国だが、先進国に勝るすばらしいものをもっている。

 
     
 
 
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