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| 大阪府堺市の病院 |
大阪府堺市の病院の職員4人が9月、糖尿病で新金岡豊川総合病院に入院していた全盲の男性患者(63)を大阪市西成区の公園に連れて行き、置き去りにした。病院職員らは「60代の男性が公園で倒れている」と119番通報し、救急車がきたことを確認して立ち去ったという。大阪府警西成署は保護責任者遺棄容疑で同病院を捜索している。堺市保健所も職員の監督不行き届きで医療法に基づいて再発防止策などの報告を求める行政指導をした。
大手新聞やテレビ局の多くは「言語道断」と病院職員や病院を「患者軽視」と非難しているが、現実はもっと深刻な社会問題を含んでいる。
男性患者は7年前に糖尿病と胃炎の治療のために他の病院から同病院に転院してきた。やがて、糖尿病が原因で失明、全盲となった。病院側は病状は安定しており、入院治療の必要はないと判断、幾度も退院を勧告してきたが、拒否されてきた。一方で全盲の障害者支援施設を紹介していたが、これも拒否された。男性患者は2年ほど前に生活保護が打ち切られ、入院費を滞納するようになった。その総額は約185万円になっていた。また、この男性患者は他の患者とトラブルを起こし、病院の備品を壊したり、看護師に暴言を吐くなどしていた。このため6人部屋を男性患者が一人で使用し、耐え切れなくなった看護師も退職したという。
職員らは男性患者を前妻(63)宅に連れて行ったところ、「持病があって面倒をみられない」と言われ断られた。職員らは男性患者を病院に連れ帰らないほうがいいと判断し、公園に放置したらしい。男性患者は「病院の職員にほかされた(捨てられた)」と言っており、発熱を訴えたため、救急隊は他の病院に搬送し、入院させた。
病院としてはもっとも好ましくない患者で、一刻も早く入院費用を払って退院してほしい患者だったようだ。救急隊が搬送した先の病院でも、同様のトラブルを起こす可能性が高い。
男性患者が病院院内で暴れたり騒ぎを起こしていた原因が、全盲になったことによる苛立ちからくるものとも考えられるが、生活習慣病患者にありがちな食事のバランスよりも食べたいものを食べてしまう、セルフ・コントロールができない性格に起因するとも考えられる。おそらく、その両方が重なり、退院後の生活不安が焦燥を加速させたものだろう。
男性患者の入院前の状況は知る術がないが、一般的な傾向として、50歳から60歳にかけて、糖尿病などの生活習慣病予備軍が大量に発生し、罹患する人がふえる。同時にこの世代は、病気やリストラ、勤務してきた企業の倒産などで仕事ができなくなり、生活が困窮する人がふえる年代でもある。そして、子育てが終わり、長年連れ添った夫婦の間に木枯らしが吹き始める。熟年離婚がふえ、とくに男性にはつらい老後を案じさせる時期でもある。
中高齢者が抱える身体的問題、家庭的問題、社会的問題は、所得格差、生活のレベルの格差が深刻さをましている日本の社会にとって、団塊の世代が定年を迎え、高齢化が加速する今、より重大な社会問題となるに違いない。この男性患者の面倒を最終的に見るのは誰か?その責任は?その答えなしには今回のような、病院が患者を公園に放置するといった事件の解決にはならない。経済的や生活面で面倒を見てくれる家族がいない、あるいは、経済的に困窮して医療費の支払いができない患者は、確実にふえていく。
「病院が最後まで責任をもて」と言ったら、病院は受診患者の選別をせざるを得なくなる。病院に行っても診察も治療もしてもらえない患者が急速に増加することは間違いない。初診時に保証金の支払いを義務付けられたり、所得証明書や会社の保証書、銀行の残高証明の提出が義務付けられるようになる。病院内での規律についても誓約書に証明捺印させられるだろう。こういう自体になったら、社会格差は急速に激化するだろう。行政やマスコミ、司法が産婦人科の医療問題を叩いた結果、産婦人科医が減少し、出産を迎えた女性がたらい回しにあったように、根本的な原因を解決しないで医療機関を叩けば、損害を被るのは間違いなく我々国民だ。
では、保健所や市町村の社会福祉窓口が面倒を見てくれるかというと、現時点では難しいだろう。おそらく、普段は偉そうなことを言っている社会福祉事務所も保健所も、この男性患者の面倒はみないはずだ。彼らは公務員、役人であり、上司の意向しかきかないし、マニュアルにないことは絶対にやらない。役人は大過なく定年を迎えて、おいしい天下り先を探すことに汲々としているだけだ。年金問題を見れば厚生労働省に普通の国の社会福祉を期待できるわけがないことは、小学生にだって分ることだ。
まして、自治体の財政負担がふえるようなことには積極的に取り組みはしない。なによりも、社会福祉のマンパワーは不足しているし、予算も削減傾向にある。そんな中で、起きた事件だ。病院の職員と病院が悪いというのはたやすい。しかし、病院にだって自分の(勤めている)病院を守ろうとするのは当然だ。できることなら、何人かの患者を公園に捨ててしまいたいと思っている病院は無数にあるだろう。
どうしたらいいか?次の総選挙の争点にならなければ前進しない。 |
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