11月25日の日曜日、大勢の買い物客でにぎわう巨大ショッピングセンターのスリアKLCCに近い英国大使館周辺で、インド系ヒンドゥー教人権団体のHIN‐DRAFが主導する、インド系住民数千人による大規模な無許可デモがあった。欧米の通信社などは少なくとも5000人以上が参加したと報道している。地元メディアの中には3万人と報じているものもある。
HIN‐DRAFはこれまでにも「(英国の植民地政策で)多くのインド人がインドから強制的に連行され、労働力を搾取された」として英国政府に一人当たり100万米ドル(約1億800万円)、総額で4兆米ドルの支払いを要求していた。HIN‐DRAFの指導者の一部にブミプトラ政策(人口の6割以上を占めるマレー人に対する優遇政策)に反発し、民族対立を煽る発言をするものもあり、日常的なインド系住人への冷遇に不満を抱いていた多くのデモ参加者が共鳴し、「マレー人だけを優遇するな」と叫びだした。
警察はデモ隊に解散を求めたが、参加者が応じなかったため、催涙弾や放水車でデモの鎮圧を試みた。デモ参加者の一部は暴徒化し、警官隊に向けて投石された。警察はデモ参加者の数百人を逮捕した。
マレーシアにプランテーション労働者として送られてきたインド人はインド南部のタミール地方出身者が多く、低カーストだと言われている。英国植民地時代は奴隷のように低賃金で酷使された。1957年の独立後は、インド人も同じマレーシア人として、それぞれの努力と能力に応じて経済力をつけ、社会的地位を築いている。しかし、彼らの意識の中にカースト制度は根強く残って、自縄自縛に陥っているインド系住民も多い。しかし、それでも、インドでの暮らしよりも、発展するマレーシアで生活するほうがはるかに経済的にも平和で安全に暮らせるはずだ、と第三者的には考える。医者、弁護士などの知的労働者、熟練技能が求められる職人などインド系の人々には優れた人が多い。植民地時代に、閉ざされたプランテーションの中で何十年もじっと耐えてきた人たちを、わたしはすばらしい人たちだと思う。
日本には在日韓国人、朝鮮人が大勢いる。日本人からは民族差別を受け、侮蔑されてきた人たちだ。しかし、彼らは日本人がやりたがらない汚い仕事や危険な仕事をして財をなした人も多いし、スポーツの世界でも学問の世界でも名をなしている人も多い。親しかった友人もいる。反面、とくに、関西地方では暴力団の構成員の半数近くが在日韓国人・朝鮮人だという。目的をもって頑張る人と、自分が報われないのは社会が悪いからだと責任転嫁してしまう人の差だ。
だから、インド系の人たちの一部が酒びたりの生活をしたり、強盗などの犯罪シンジケートの構成員になってしまうのは、マレーシア社会のせいではないと思っている。もちろん、ブミプトラ政策のせいでもない。
マレー人、インド人、中国人、マレーシアには民族性も宗教も違う大きく三つの民族が共生している。マレー人は自分たちの民族こそ、マレーシアそのものであり、自分たちの努力と才能によって、経済的に発展させてきたという自負がある。中国人には、経済的発展は自分たち中国人の努力の賜物だと信じている。インド人だって、発展するインドとの架け橋になるのは自分たちだという気負いがある。
個人的には、わたしは中国人、インド人、マレー人のドクターに救われている。それぞれに信頼できるすばらしいドクターだ。マレー人のドクターもブミプトラ政策の恩恵によって現在があるのではない。本人のたゆまぬ努力と研鑽によるものだ。医者以外にも、民族を問わず、すばらしい人々がいる。民族による優劣はない。
インド系の人々で、社会の底辺にいることを社会のせいだとし、ブミプトラ政策をインド系住民にも優先保護をというのは、甘えがすぎるというものだ。そういう自分の努力や研鑽がたらないことを棚にあげて社会に責任転嫁し、俺たちにも優遇政策をしてくれと言うような人間はどこまで行っても、仮に優遇政策を与えてもダメ人間に終わってしまうに違いない。優遇されているマレー人の中にも、少数だが、引ったくりや置き引きなどの窃盗犯罪によって欲しいものを買い求めている連中もいる。優遇してもダメな奴はダメ。優遇されなくても伸びていく人は自分から伸びていく。社会の問題ではない。自分自身の問題なのだ。インド人の頭脳が優秀であることは知られている。インド本国では伸ばせない能力もマレーシアでなら伸ばせる。
今回のデモが、深刻な反政府運動に進展する恐れはないと思う。デモの指導者たちは、一定以上の知識人のはずだ。英国への賠償請求の金額が常軌を逸しているとしても、インド系住民の不満のガス抜きにちょうどいいという思いがあったはずだ。要求が通るはずがないからだ。指導者が理性的であれば、悪い方向に向かうことはない。それに、デモの参加者だって、マレーシアにいる限り明日の飯が食えないわけではない。どんな家に行ってもテレビや冷蔵庫、洗濯機くらいはある。乗用車はなくても、バイクくらいはもっている。十分恵まれているのだ。騒ぐだけ騒いで、うまくいけば恩恵にあずかれるという程度のことではないか。
そして、マレーシアの警察は凶悪犯罪者以外の自国民には絶対に銃口を向けない。だから、問題はこれ以上大きくはならないと思う。 |