「飛び込み出産」が増え、
産婦人科病院と医師は減っていく
 産婦人科医を希望する医学生が減っているという。全国的に大規模病院の産婦人科や産婦人科医院が減っている。産婦人科医も減少しており、救急車で運ばれている緊急を要する妊婦が救急病院に搬入を拒否されたらい回しにあって、母子ともに危険な状態に追い込まれている。
 
 最近の傾向として、妊娠検査を受けず、つまりかかりつけの産婦人科医がまったくない女性が、出産直前になって救急車で搬送される「飛び込み出産」のケースが増えているという。妊娠の自覚があって、「30週をすぎていると思うけど、出血が止まらない」と病院に電話してきた女性がいた。母子ともに危険な胎盤早期破剥離だった。こういう女性が飛び込んでくると、病院も医師も困惑する。何週目の胎児かも分らず、胎児と妊婦に関するデータがまったくない状態で手術をするのはリスクが大きい。流産しやすいなどの妊婦の体質、既往症の確認、感染症検査、薬物アレルギーの有無、HIVやC型肝炎などに感染しているかどうか、手術には様々なデータが必要だ。データなしに出産をさせる行為にはリスクがともなう。不測の事態が発生して、手術が失敗し、死産や、母体に影響が残ることもある。そして、医師や看護師が、妊婦自身がもってきた感染症に感染する可能性も高い。また、こうした「飛び込み出産」の場合、早産や新生児異常が増えているという。
 手術がうまくいけばいいが、不測の事態が起こり不幸な結果になると、訴訟を起こされたりする。人権弁護士は「病院イコール悪」と叫べば、自分の知名度が上がると必死になり、マスコミは視聴率を上げようと鬼の首でもとったように病院を叩きはじめる。弁護士もマスコミも「飛び込み出産」であったこと、データが皆無だったことには沈黙してしまう。
 うまくいって、母子ともに無事に退院することになっても、「飛び込み出産」の場合、出産費の踏み倒しが多いのだという。産婦人科病院にとって「飛び込み出産」はうまくいっても金を払ってもらえない、下手をすれば告訴され、マスコミに叩かれ病院は存続の危機にさらされる。
 「飛び込み出産」が増えた理由は、妊婦の母親になるという自覚不足や危険に対する認識の低さ、そして、経済的事情があると言われている。つまり、日本人の若い女性の一部が生殖本能と知的水準が犬、猫、猿レベルにまで劣化しているのだ。出産前の検査費用は一回1万円弱、通常は数回検査に行く。出産費用は健康保険から「出産育児一時金」が一律35万円支給される。この一時金は出産した母親に支払われる。「飛び込み出産」の女性は「出産育児一時金」が支払われた後も平気で踏み倒していくことが多い。

 こうした現状もあって、病院側は救急車で搬送されてくる「飛び込み出産」の妊婦を歓迎しない。受け入れて、最善を尽くし、必死に治療して、母子ともに健康で退院しても、出産費用を払ってもらえない。そして、うまくいかなければ訴訟され、マスコミに叩かれる。必然的に、できれば断りたいと思う。病院には、もっと深刻な病状の患者が運ばれてくる。常識的には、妊娠している女性にはかかりつけの産科医がいると誰しもが思う。出産は病気ではない。哺乳動物のごく当たり前の生殖、繁殖行為だ。人間だって未開発のアマゾンのジャングルの中でも、アフリカのサバンナでも先進国の何倍もの出産が行われている。日本という先進国に住み、教育を受けてきた女性が、女性として、母親としてやるべきことをやらず、普通のことを考えもしない。その挙句が救急車で搬入される「飛び込み出産」だ。「なぜ、救急車で?」と訝しく思うのは普通だ。「関わりたくない」、それは、病院の事務局員も医師も普通の人間だからだ。
 いくつもの病院に受け入れを拒否されて、不幸な結果になることがあると、マスコミはあたかも断った医療機関が死を招いたというような表現をする。しかし、日本にもマレーシアにも産婦人科の専門医をしている友人がいる。彼らは、24時間、ポケットベルや携帯電話をオンにしていて、病院や医院から連絡があれば、何十年ぶりの会った友人と歓談中で会っても、何はさておき病院や医院に帰っていく。「仕事とはいえ、たいへんだなあ」と感心している。彼らの出産という荘厳な行為に対する思い、妊婦や新生児への思いやり、産婦人科医としての職業意識は尊敬に値する。そんな産婦人科医たちが叩かれている。
 それでも産婦人科医をふやせという。ふえるわけがない。産婦人科医のなり手がいない。産婦人科医が減ったのは権利意識がつよいくせに、金をつかわないで安全に子供を産もうという浅はかな女性や、女性や患者など弱者の味方をすれば、正義を訴える弁護士、マスコミとして認識されると信じている弁護士やマスコミのせいだ。もちろん、それを受け入れている一般大衆が一番悪いのだが。
 産婦人科医療をいかに充実させるか、政府が真剣にとり組む必要がある。もっとも、管轄する厚生労働省にそんなことを期待しても無駄なことだ。責任逃れに必死で、利権をつかんで退職後の再就職先を確保することだけに躍起になっている厚生労働省の役人が、一文にもならないことをやるわけがない。今後も、産婦人科医のなり手は減る一方だろう。産婦人科のある病院も減るに決まっている。
 近い将来、子供を産みたかったら、危険だけれど出産費用のやすい中国に行くか、犬や猫のように自然のままに出産するしかなくなる。

 
     
 
 
ここに掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権はA. P. PRESS (M) SDN. BHD.またはその情報提供者に帰属します。
POWERED by Minamikaze Digital Animation Studio Enterprise