第1回
2005年全日本GT選手権 (1) 
 
 
前田 利幸
 「えっ、マレーシアにレースの取材? それ断れません?」
 2002年、全日本GT選手権がその年初めて行った海外ラウンドということで、一度セパンを訪れている私は、レース取材で生計を立てている身ながら、ちょっと躊躇した。だって路面温度58℃って、数字じゃピンとこなかったけど体験してみるとサウナに一日中いるみたいで、とても仕事なんかしていられない。
 と言いながら結局やって来ました今回も! 実際、我々なんかよりもドライバーさんはもっと大変なんだもの。文句ばっかり言っちゃいけません。
 でも、よく見るとセパンのレースって面白い。というか、ここでしか見ることができないレースだ。2002年の時は、速い、遅いよりも、やれタイヤがもたないだとか、パーコレーション(*1)だとか、ドライバーが脱水症状だとか、レースというより我慢大会。F1などのオープンホイールにくらべ、風がドライバーに当たらないGTカーのほうが過酷なのはわかるが、「それにしてもねぇ」って感じだった(当然レースカーにクーラーはついていないし)。
 しかしあれから3年経った今年のレースは素晴らしかった。日本で最高峰のハコレース(*2)。さすが世界のトヨタ、ニッサン、ホンダが争っているだけのことはある。我慢大会の様相は今回、殆ど見られなかったのだ。
 で、よくよく見ると、いろんな工夫が見られる。特にドライバー対策。車内にファンが設置。ドライバーはクールスーツなんてものを身に着けている(シャツに管が通してあり、冷気を送る装置。かなり快適らしい)。そして一番面白いのは、どのチームもピットの外にビニールプールを置いていたこと(ちなみにおもちゃ屋で売ってる子供用のやつ)。なぜなら、マシンから降りたドライバーがいち早くクールダウンするため。クーラーでは時間がかかるし冷えすぎるので、プールに飛び込むほうがいいらしい。ぜひこれは、時代が進化しようとも「セパン名物」としてモータースポーツ史上永遠に受け継がれるべきだ。そして肝心のマシンに対する暑さ対策は、というと、いうまでもなく3年間のデータがあれば、世界に名だたるトップメーカーのことですから、もはや全く問題ないわけです。
 という訳で、オープン当時は最も近代的なサーキットとして(最近の国際サーキットの殆どを手がけるヘルマン・ティルケがデザイン)話題になったセパン・サーキット。コースレイアウトも面白く、設備も素晴らしい。特に、我々がお世話になるプレスルームの広さ、快適さは世界最高峰といっていい。スタンドもかっこいい大きな屋根がついていますが。おかげでお客様もかなり涼しげ。そして、コース上ではセパンならではの、速さだけでない暑さとも戦う究極の開発技術が争われる。どうです? レースファンのみなさん、行ってみたいでしょ。
 私、ぜひ来年も行きますよ。いやスポンサー様、連れてって!
 
 <注>
(*1)暑さのため、燃料が気泡化してしまい予定より早く無くなる現象。
(*2)市販車をベースに改造を加えたマシンで行うレースの総称。国内ではGT選手権、スーパー耐久などがメジャー。
 
     
 
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