その二十七
日本人だけで固まっているマナーを知らない日本人たち

日馬プレス 渡邉明彦
 

 川内光治先生はゴルフが大好きで、ロイヤル・セランゴール・ゴルフ・クラブ(RSGC)の数少ない日本人メンバーでした。毎朝診療所に行く前にラウンドするのが日課でした。
  
 企業の進出がふえるにつれてRSGCの日本人会員もふえ、20、30人となった頃のことを思い出して、「日本人だけでゴルフコンペをやり、クラブハウスで祝賀会や賞品授与式をやっている。わたしや天藤さんは地元の人々とほとんど毎月のようにゴルフコンペをやっていました。日本人は地元の人たちと一緒にやらないんですね。クラブハウスの中で、日本人だけで賞品授与式をやって大騒ぎをしている。現地人のメンバーの大顰蹙(ひんしゅく)をかって、最後にはクラブの委員から「日本人は賞品授与式とか祝賀会をクラブハウスでやらないこと」というお達しが出た。マレーシアの人々やマレーシアに来た多くの国々の人々のためにある伝統のあるゴルフ場で我が物顔の日本人たちが日本人だけで集まってごそごそやっているのは見苦しいことだったのでしょう。

  そして、あるとき、日本人ゴルファーが別のマレーシアのフライトに向かって「バカヤロー」と言ったという。RSGCのメンバーにはマレーシア政府の閣僚や官僚や外国の外交官などが多い。そのときも大臣がメンバーに入っていた。太平洋戦争中、日本兵が地元の人々や部下の兵士に向かって[オイ、コラ]、「バカヤロー」と叫んでいるのを見聞きしていたマレーシアの人々はその意味をよく知っている。つまり、この日本人はマレーシアの大臣に向かって「バカヤロー」とののしったのだ。

  また、別の日本人が、アゴン(国王)がはいっている前の組にゴルフボールを打ち込んだことがあったという。ゴルフの大切なマナーの一つに前の組に迷惑をかけてはいけない。周りでプレーをしている人たちの邪魔をしてはいけないというのがある。絶対に前を行くグループに当たらない距離になるまで打ってはいけない。幸いボールは国王にも護衛の人々にも当たらなかった。
[バカヤロー]と叫んだ日本人も、国王の組にボールを打ち込んだ日本人も、24時間以内の国外追放を命ぜられたそうです。

  スポーツというのはすべからくルールとマナーを守ることによって成立する。プロレスのように単純に運動能力と体力だけで勝負するものではないのです。日本人の中にはこのことがまったくわかっていないくせにスポーツマンと自称している人が多い。川内先生や義兄の森先生たちが関わってできたクアラルンプール日本人会では、現在もKL日本人会のメンバーではない人たちが日本人会のソフトボールやバレーボールなどの活動に参加している。なぜ、日本人会に入らないかと言うと「何のメリットもない」と答える人が大多数だ。原則的に日本人会のメンバー以外は日本人会のクラブハウスや日本人学校の利用はできないはずだ。そして、ソフトボールなどの活動を通じて友人ができ、ストレスが発散できる。ビジネスチャンスが生まれる可能性もある。それなのに「メリットがない」と嘘をつく。ルールもマナーもない日本人たちの集まりなのだろう。まあ、日本人だけで集まってという体質は昔も今も変わらない。

 
     
 
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