障害者スポーツ・アーチェリー
「裸足の哲人」アベベが愛したアーチェリー
日馬プレス 渡邉明彦
 
 50代後半から上の人ならば、1960年のローマオリンピックで古代ローマ時代に造られたアッピア街道の石畳を裸足で走ったマラソンのアベベ・ビキラを知っているだろう。「裸足の英雄」は東京オリンピックでも優勝した。1969年、そのアベベ選手が交通事故に遭い下半身不随になった。アベベの障害は重かったが、車椅子に乗り、アーチェリー、卓球、マラソンに挑戦。犬ゾリレースにも出場し優勝したという。
 裸足の英雄は二度と裸足で走ることはできなくなった。それでもアベベは自分の限界に挑戦しつづけた。パラリンピックにアーチェリーの選手として出場した。
 アベベはスポーツを通して、障害者に向かって、いや、世界中のすべての人々に向かって「生きる勇気」を投げかけつづけた。哲学的な容貌で、甲州街道を淡々と走りつづけた。下半身付随になっても、アベベの心には「どんなに貧しくても、どんなに重い障害を抱えていても、スポーツは生きる勇気を与えてくれる」という確信があったのだろう。アベベは41歳で死んだ。平均寿命の短い国だから、「若くして」という表現は適切ではないかもしれない。
 アベベの母国エチオピアは1974年クーデターによって皇帝を廃位し、社会主義国家となり旧ソビエト連邦との友好関係を築いた。41歳でアベベが死んだのは1973年10月5日。政局が大混乱をしている最中のことだった。
 東京オリンピックでアベベと共に走り、銅メダルに輝いた円谷幸吉は「周囲の期待に応えられない」と思いこみ、メキシコオリンピックの年、1968年に自殺した。アベベは貧しいエチオピアの軍人、円谷は未曾有の経済発展途上にある自衛隊の隊員だった。円谷幸吉は27歳で死んだ。これからというときに。

◆パラリンピック・アーチェリーの種目は
アーチェリーは障害者も健常者も同じ条件でできるスポーツです。しかし、障害者にとっては障害の度合いによって様々なハンディキャップがあり、下肢に障害のある人々は車椅子の使用が許可されています。
  上肢障害
 下肢障害(立位)
 体幹障害
 頚髄障害
 下肢障害(座位)
 脳原性障害
 聴覚障害

A.アウトドア・ターゲット・アーチェリー
 アウトドア・ターゲット・アーチェリー個人戦
 屋外の平坦なグランドで男女それぞれ4つの距離で36射ずつ、計144射します。一般にはターゲットと呼んでいます。
 ターゲットにはリカーブとコンバウンドの2種目があります。
*リカーブはリムの先端が逆反りした形状の弓。オリンピックと国民体育大会ではこのタイプの弓だけが使用を認められます。
*コンバウンド両リムの先端につけられた偏芯滑車の作用で、引き重量が途中で軽くなる弓。リリーサー(発射装置)の使用も認められています。
 90m、70m、60mを長距離といい、1エンド(1回に射る矢数)6本の矢を4分以内で射たなければいけません。標的の直径は122cmです。50mと30mは短距離といい、3本の矢を2分以内で射らなければいけません。短距離の標的の直径は80cm。
 標的は五色の色環帯があり、さらに10個の得点帯に分割されています。中心円の直径は長距離が12.2cm、短距離が8cmです。中心円を射れば10点、外に向かって1点ずつ減っていきます。

 健常者の大会では、最初のラウンドが予選になり、大会によって異なりますが規定の上位者だけで決勝ラウンドを行います。決勝ラウンドは1対1のマッチ戦になります。70mの距離で122cmの標的をつかって行われます。射る矢の数は1マッチ、18本。ベスト8の準決勝以上は1マッチ、12本で行います。
〈個人選のカテゴリー〉
リカーブ(RC) 男子  90m 70m 50m 30m
リカーブ(RC) 女子  70m  60m 50m 30m
コンパウンド(CP) 男子 90m 70m 50m 30m
コンパウンド(CP) 女子 70m 60m 50m 30m

〈団体戦〉
 個人選の結果でチームの上位目の3人がチームを構成し、個人選の成績の合計の上位16チームが団体戦に出場することができます。距離は70m、標的は122cmです。
 団体戦は1エンド9射を3エンド行います。具体的には、3選手が3射ずつ3エンド射るので27射の合計がチームの点数になります。制限時間は個人選の半分、1エンド3分になります。時間内に射ち終えるために、3選手の時間配分が問題になります。チームワークが必要です。

B.インドア・アーチェリー
 アウトドアと同様にリカーブとコンバウンドの2部門で行われます。
射距離は18m、標的の直径は40cmです。1エンド3射で20エンド行い、合計60射します。1エンドの制限時間は2分です。予選ラウンドで上位が決まると、アウトドアの決勝トーナメントと同じく、1対1のマッチゲームになります。

陸上競技
◆種目
男子:100m、200m、400m、800m、1500m、5000m、10000m、マラソン、4-100mリレー、4-400mリレー、走り高跳び、走り幅跳び、三段跳び、砲丸投、円盤投げ、やり投げ、ペンタスロン
女子:100m、200m、400m、800m、1500m、5000m、10000m、マラソン、4-100mリレー、4-400mリレー、走り高跳び、走り幅跳び、砲丸投、やり投げ、ペンタスロン

◆クラス
 視覚障害、脳性まひ、切断やその他、車椅子の区分がある。さらに障害の程度に応じて複数のクラスに分かれる。原則的に1の位の数が小さいほど障害の度合いが重い。「T」はトラック競技、「F」はフィールド競技。

◆ルール
 視覚障害者

 T11とF11の選手は1500mまでの短中距離走とフィールド競技では黒メガネを着用する。800mまではガイドランナーが必要になる。ガイドの方法は「ひじをつかむ」、「紐を結ぶ」、「口頭で指示する」。その際に50cm以上離れる。マラソンではT11とT12の選手は4人までガイドを交代させることができる。跳躍競技では助走と踏みきりの際、音声による補助ができる。

 車椅子(トラック)
 追い越される選手は、追い越そうとしている選手の進路を妨害してはならない。ゴールの判定は、前輪の車輪がゴールライン手前側の縁に接触した瞬間。

 車椅子(投てき)
 F32?34、F51?58の選手は、固定された特別の椅子(フレーム)に座って競技を行う。

 リレー
 車椅子のリレーは、バトンの受け渡しの代わりに、体の一部に触れて行う。

 切断その他
 跳躍競技では下肢に障害がある場合は、助走なしのジャンプが認められる。
 
     
 
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