いい医師、いい病院は自分で選ぶ。
 マレーシアの医療事情についてクアラルンプール首都圏の4つの医療機関とペナンの1つの医療機関を中心に、マレーシアの医療機関のシステム、施設や設備、準備や心構えなどを特集してきました。

 誤解されると困るのですが、掲載した5つの医療機関だけがすべてという訳ではありません。

 クアラルンプール首都圏でいえば、タワカル・ホスピタル、アスンタ・ホスピタル、婦人科で有名なChinese Maternity Hospital等々、ペナンではアイランド・ホスピタル、日本の大学の医学部を出たテー医師の「日本薬房」等々、地元の人びとの信頼をあつめている病院がいくつもあります。

 どの病院がいいかを決めるのは、ご自分です。日本人だけでなく地元の人びとか らも自分で情報をあつめ、いざというときに備えておいてください。とくに、家庭内にいることの多い、主婦や就学前の子供にとっては医療情報はもっとも貴重な情報です。

 幸い、マレーシアの医療レベルは国際的にも高いレベルにあると思います。イギリスやシンガポールなどの大学の医学部で医師免許をとり、博士号をとった医師も大勢います。多くの医師たちは欧米の最新医療の情報を入手し、必要に応じて研修を受けにいって自身の医療技術や知識の向上に努めています。

 医師のモラルについても、わたしは自分の経験から見て、日本と遜色ないとかんじています。これまで幾度か『日馬プレス』にも書いてきましたが、11年前にわたしの右頚部に大きなこぶができたときに、個人的に親しくしていたマレーシア人医師が無理矢理検査入院させてくれて、転移性リンパ腫というガンを見つけてくれました。転移性リンパ腫の原因となったオリジナルのガンが見つからずに治療方針がたたなかったときに、インド人の外科医の先生が「すぐに日本に帰って精密な検査をしてオリジナルのガンを探してきてください。検査機器、検査技術は日本の方がはるかに優れています。検査が終わり、治療方針がたったら、日本でもマレーシアでも、どちらでもあなたのいい方で治療してください。マレーシアでというなら、わたしたちは日本と同じレベルの治療をします」と言ってくれました。

 自分の病院でできることとできないことを、きちんと患者に説明できる医師がいるということに感激しました。実際に患者と向き合って治療方針を立て、治療を進めていく臨床医学のレベルでは絶対の自信をもっているように感じました。わたしは、日本のある大学病院の教授と親友だった関係で、彼の紹介する病院に入院し、信頼できる医師にめぐりあい、検査や治療を受けました。その病院とは様々な縁がありました。初代の院長先生が幼稚園残りからの友人の父親であったり、医師や職員に友人の知人が多く、また、生まれ育った故郷の病院ということもあって、日本での入院治療を選びました。

 医療レベルに関しては、日本がいい、マレーシアがいいとは一概にはいえないと思います。例えば、テング熱やマラリアといったいわゆる熱帯病については、マレーシアの方が絶対的に臨床例が多く、多種多様な症例を熟知した専門医も多く優れていると思います。日本では臨床例が少なくなった病気もあります。また、不妊治療なども優れていると聞いています。
 

医師への信頼、病院への信頼
 
 世界中どこに行っても、名医もいれば、ヤブ医者もいます。いい病院もあれば、悪い病院もあります。
 ただ、ある人にとってはいい医師、名医であっても、別の人にとってはとんでもないヤブ医者だということがあります。近所の子供たちが「あの医院の先生はヤブ医者だから、患者をすぐに別の病院にいれちゃう」と言っていたことを憶えています。ホームドクターとして自分のやるべきことは、患者の症状を見て、場合によってはより専門的な医師に診察してもらう方がいい、よりよい医療設備の整った病院に行く方がいいと判断することだ」という理念をもったすばらしい町医者だとわたしは信じていただけにショックでした。「腕が悪いから、ちょっと重い患者を別の病院に送ってしまう」とお母さんたちが噂をしていたのでしょう。
 ひたむきに救急医療に取り組んでいる病院が「あの病院に入ると、生きて出てこられない」と誹謗中傷する人がいます。救急病院は一般患者だけを扱う病院より、病状が深刻な患者を多く扱うのですから、運び込まれた患者の中の一部の患者が遺体となって搬出されるのは仕方がないことだということを「知ってて知らん顔」をしてしまうのです。

 わたしは自分が信頼できる医師がすばらしい医師であり、信頼できる病院がいい病院だと考えるべきだと思っています。
 実際にはいい病院でも、「あの医者はヤブよ。あの病院は金儲け主義よ」と信じて疑いの念をもつならば、その医師や病院にはかからない方がいいでしょう。患者と医師の間の信頼関係なしに、適格な医療行為はできないと思います。
 逆に、実際にはヤブであっても、「この先生はいい医者よ」、「この病院は最高」と信じられるのなら、その医師や病院にかかる方がいいでしょう。信頼関係があれば、治療が難しい病気であっても治ってしまうことがあります。
 こうしたわたしたち患者の医師や病院に対する気持ちは日本にいたときと同様のものです。マレ−シアだからどうこうというのではありません。日本にもマレーシアにも名医もいればヤブ医者もいる。医師を信頼する人もいいれば、最初から疑ってかかる人もいる。それは仕方がないことです。
 
 だからこそ、冒頭に書いたように「どの病院がいいかを決めるのは、ご自分です。日本人だけでなく地元の人びとからも自分で情報をあつめ、いざというときに備えておいてください。」が大切なのです。
 いろいろな情報があります。病院に行き、医者にかかり、いいときも悪いときもあります。悪く悪く考えていたら、いざというときに選択肢が少なくなってしまいます。「あの病院は駄目.あのお医者さんは駄目」と言ってばかりいたら行く病院がなくなってしまいます。

 11年前、わたしは診察のために千葉県がんセンター頭頚科の島田先生に初めてお会いしました。そのときの第一印象が「ああ、この先生に任せておけば、このがんは治る」だったのです。「すぐに入院の手続きをしなさい」と言われて、手続きを終え、ナースステーションに行くと、婦長さんがわたしの首を見て「ずいぶん膨らんだわねえ。でももっと膨らんでた人が、元気になっているわよ。そこの病室にいるから話を聞いてくれば」とあっけらかんと言われて、「この病院にいれば、生きて帰れるんだ」と信じるようになりました。
 深い理由があった訳ではありません。親友が「東日本で一番腕がいい医者だ」と紹介してくれたこともあったでしょう。でも、何となく「生きて帰れる」と信じてしまったのです。
 身内に不幸があったり、死を意識するほどの病気になると必ずやってきて入信を進める宗教もやってきました。「わたしはこの病院の医者と看護婦を信じていれば助かると信じているから」と言って断りました。自分が信じた存在、それがすべてでした。
 わたしは今でも、そのおかげで生命長らえることができたと信じています。

 信頼できる医師、信頼できる病院とめぐりあうということは健康な生活をしていく上で、ものすごく大切なことだと思います。
 海外で生活しているのですから、病気になって困り果てて「どうしよう?」、「どこの病院に行こう?」、「日曜日だけどどうしたらいいの?」なんてことになる前に、「どうするか」を考えておくべきでしょう。
 自分の身は自分で守る。自分の家族の健康はお父さん、お母さんが守ってややなければいけません。健康診断をかねて、いざときのときの対処法を医師や看護士などにあって相談してみる。ウィークエンドやロングホリデーのときにどうするか、とくに小さなお子さんをお持ちのご家庭では考えていくべきでしょう。
 休みの日に日頃世話になっている主治医とも看護士とも連絡がとれない。緊急受付にいかなければいけないけれど、言葉が通じない。そういう最悪の事態を想定して、病状を英語できちんと伝えてくれる、日本語の堪能なマレーシア人と親しくしておくということも大切です。
 

 
     
 
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