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#09 |
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子沢山の義父は、
勢力モリモリ |
| 小田島小百合 |
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結婚して1年半、ついに、わたしの体の中にわたしと夫カマルディン・ビン・ダト・ハジ・イスメイルの愛の結晶である新しい生命が宿ったんです。 、
何となく妊娠したような感じがして、カマちゃんに内緒でクアラルンプールの中心にある婦人科専門の病院に行って検査をしてもらったら、案の定、お医者さんに妊娠ですと言われて、
「ヤッター!バンザーイ!」と思わず叫んでしまいました。お医者さんも看護婦さんも「えっ」って顔をして驚いたんです。はしゃぎすぎちやったってことかな?
カマちやんのお父さんであるダト、・ハジ・イスメイルは2人の奥さんとの間に7人の子供がいるんです。よく聞いたら、ほんとうは11人だったんだけど、2人は赤ちやんのうちに、1人はマラリヤで、もう1人は2、3年前にバイクの事故で死んじゃったんですって。
一番下の子供は50歳を越えてからできたというから、老人のくせに精カモリモリって感じがするんです。
孫は何人いるかよく分からないくらい。だって、みんな同じ顔をしていて、名前も似ているし、覚えきれないんです。
カマちやんの親戚や友達のマレー人の家って、どこも子供がいっぱいで、だれがだれの子供だか分からない。みんな、子供が大好きみたいで、可愛くて可愛くてしょうがないって表情で、子供を大事にしている。金切り声をあげて騒いでも、食事をしている周りで飛び回っても、何をしても絶対に怒らない。
そんな状態だから、わたしが1年以上妊娠しなかったのが、お義父さんには理解できなかったらしいの。顔を合わせれば、わたしの豊満な肉体をジロジロ見ながら、
「子供はまだか。早く、孫の顔を見せてくれ」。
必要なら、カマちやんに代わってでも予供を作ってしまいそうな意気込みを感じたのは、錯覚だったのでしょうか。
それでも、わたしが妊娠したことを報告に行ったときは、
「バンザーイ!」と日本語で叫んだんです。
万歳に続いて、
「天皇陛下、万歳!」って、小声で言って、乱杭歯を見せてニヤっと笑ったんです。
お義父さんは時々、太平洋戦争のときに日本軍の兵隊から習ったという片言の日本語を思い出しては、突然、私に向かって、
「気をつけー!」とか、
「バカヤロー!」とか叫ぶんです。
わたしは無視すると、むきになって‥‥。
いい人なんです。日本人が好きですし‥‥。
でも、ちょっとね、時代感覚がずれているというか、ドン臭いというか、ま、いわゆる、日本によくいる、中年親父のマレーシア版ってところかな。 |
| マレーシアで産むんだ |
何はともあれ、日本の両親にも報告したんです。
喜んでくれると思っていたのに、
「これで、お前もマレーシア人になっちやうんだねえ」って、冷めた調子のお母さん。
「初孫なのにな。お前に似てくれればいいんだけどな」と、お父さんは意味深長な発言。
だって、お父さんがわたしのような子供を期待するわけがないもの。
ま、複雑な心境であることは分かるけどね。
でも、絶対に裏があるな。
お母さんは、
「そっちで産むの?ちゃんとした病院はあるの?お呪いをするお医者さんじゃないんでしょうね?出産のやり方も違うんでしょう?お金はあるの?言葉の問題は大丈夫なの?」と質問疑問のラッシュアワー。
あげくの果てに「日本で産んだほうがいいわよ。帰ってくれば?」。マレーシアのお医者さんをまるで信用していない。
「大丈夫なの。この国にはイギリスやアメリカの大学を卒業した立派なお医者さんがたくさんいるの。日本のへたな産婦人科の先生よりもずっと上なんだから。それに、マレーシアの子はマレーシアの病院が一番なの。心配ないわよ」と何度言っても分かってくれないんで、説得するのに一苦労したんです。
一番の理由は、カマちゃんと別れて暮らしたくないからなんです。
息子の嫁に色目を使うあの父親を見れば、息子である力マちゃんが浮気性であることは間違いない。あの父にして、、この子あり。目をはなしたら、危ない、危ない。スキがあれば第二夫人をなんて考える奴なんだから、、。
同僚と同じように、妊娠中でも働こう。おなかが大きくなったら、お客さん達にわたしが結婚しているってことがばれちゃうけど、ま、いいか。いつまでも隠しておけないしね。
2年の契約期間が終わったら、ホテルを退めようかな。やっぱり、赤ちゃんのうちは自分で育てたいもの。
でも、生活力がないというより、浪費癖のあるカマちゃんの給料だけでやっていけるのかしら。
お父さんもお母さんも、余りよく思ってないみたいだか、救援信号を送っても無視されるか、下手すりゃ、「帰ってこい」ていうにきまっている。期待と不安が交錯した。 |
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| 本稿は日馬プレス第178号(2000年5月16日)に掲載されたものです。 |
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