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#16 |
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逆転!!
再就職ばんざい |
| 小田島小百合 |
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| 就職に、お義父さんが関係あるの? |
マレーシア人を配偶者としている外国人のスペシャリストにはワークパーミットが簡単に出るようになった、ということも就業の追い風に感じていました。けれど、実際の面接ではそんなことは一切関係ありませんでした。
日系の機器や設備の販売会社の面接をしてくれたのは、ホテル時代に数回お会いしたことがあるSさんでした。
「マレー人と結婚しているんだったよね」と、履歴書を見ながら話しはじめました。
「はい」
「ご主人も日系企業で働いているんだね」
「はい」
「どこの会社ですか?」
「(反官反民企業の)XY社のエンジニアですけど、それが何か?」
「いや、何でもない。とこうで、ご主人のお父さんは何をやってるのかな?」
「元××省の役人で、いまは幾つかの会社の役員をしているみたいですよ。それが何か?」
「いや。何でもないけど、君のお義父さんの名前と、役員をしている会社の名前を教えてくれないかな」
「そのことと、わたしの面接と何か関係があるんですか?」
「う一ん。あると言えばあるし、ないと言えばないんだけどね。とにかく教えてよ」。
そうか。 わかった。
要するに、カマちやんやカマちやんのお義父さんに利用価値があればわたしを採用する、利用価値がなければ採用しないということか。
カマちやんはまだ小物だけど、お義父さんは根っからのスケベだけど、一応は知るひとぞ知る日系大企業の現地法人の役員もしているらしいし、役所時代の同僚や部下とはしょっちゆうゴルフをしているし、自宅にはスルタンや政治家たちと一緒の写真が何枚も飾ってあるし、大物っぽい雰囲気を持っているのよね。
わたしとカマちやんの結婚式にだって、何とか大臣だとか何とか省のお偉いさんとか、何とか会社のCEOだとかがごそごそいて、結婚式そっちのけでひそひそゲラゲラやっていたんだから‥‥。
でも、最初からカマちやんやお義父さんのコネの力を目当てにわたしの採用が決められるのは、やっぱりおもしろくないし、魂胆が見え見えでちょっと嫌らしすぎる。
でも、これを蹴ったらこれっきり仕事が見つからないかもしれないし、どうしよう。
仕事でお義父さんのコネを利用するとなると、夫婦間のわたしの立場は益々弱くなってしまう。
カマちやんが強気になるのは目に見えているものね。
“To be,or not to be.That is question."
プライドに生きるか、餌を目の前にして従属を誓うか、う―ん、苦しい。
わたしにも、北朝鮮の金正日総書記みたいに、プライドは高く、ほしい餌は国民を犠牲にしても脅しとるくらいのしたたかさがあればいいのに。
く―!
悩める大和撫子の小百合ちやん。
ことわろう。強気で逆転ホームラン
決めた。
こんな会社、もったいをつけて、こっちから断ってやる。
「お義父さんはSH社の役員と、知らないかも知れませんが政府系企業のF社とも関係が深いみたいです。何でも20以上の会社の役員をしているっていってました。それから、X×省の大臣と親交があるし、副大臣は同期だったらしくてしょっちゆうゴルフをやっています」って、思いっきり吹いてしまったんです。
Sさんの目は真剣でした。
功名心に走る中堅ビジネスマンの目は獲物を狙う豹のように精悍で、というのなら、わたしの心も動いたのでしょうが、罠のなかに自ら飛び込んできた獲物を傷つけぬようになだめすかして自分の掌の中にいれようという魂胆が見え見えでした。
「わたしの面接はどうなっているんですか?」って、あらたまって聞いてみました。
「それは、ぜひ、わが社で働いてもらう方向で検討したいと考えていますけど」ですって。
「“将を射んと欲すれば、まず、その馬を射よ”ですか?」
「‥‥」
Sさん、目が点になっていました。
意味を理解するのに時間がかかづたみたいでした。
「そんなことはないんですがね。採用するしないは、あくまで人次第ですから」
「それはありがとうございます。でも、お義父さんは皆さんが考えているような縁故主義や身がいき主義の人じゃあないんです。清廉潔白でわたしが頼んでもいうことなんか聞いてくれませんよ」と言ってやったんです。
「それでもいいんですか?」
わたしはダメを押しました。
人次第ですと言ってしまった手前、ひっ込みがつかな゜くなってしまったんだと思うんです。
Sさんは、
「一応、社長の決済をもらわなければならないんですけどね、あなたのことは社長も以前から知っているので “NO”とは言わないと思います」ですって。
それから、
「ホテルでの仕事が身についているんですね。、冷静に相手の心理を見ることができるのはピジネスの上でいいことだと思います。それに、思ったことをはっきり言う。ぼくたちにはなかなかできないことなんで羨ましいと思いますよ」。
ヤッター! 、
ほんの一瞬だったけど、一度はあきらめたあとの逆転判決だったし、いやな奴と思った人が実はいい人だったということがわかって、すごくうれしい。
何より、自分を認めてくれたのがうれしい。
これなら、お義父さんに紹介してやってもいいかな、と考え直じました。 |
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| 本稿は日馬プレス第185号(2000年9月1日)に掲載されたものです。 |
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