Anna and the King
国際交流基金 滝口 健
 
 今回の「劇場に出かけてみませんか」は芝居ではなく、映画のご紹介です。99年公開の「アンナと王様(Anna and the King)」、ジョディ・フォスターとチョウ・ユン・ファの競演で話題となった映画です。19世紀のシャムを舞台とした、モンクット王(ラーマ4世)と彼が雇い入れた英国女性の家庭教師、アンナ・レオノウェルズの物語は、「王様と私」のタイトルで何度も舞台化・映画化されていますが、「タイの王が英国人から教えを受けることなどあり得ない」ということでタイでは上映が禁止されているという曰く付きの物語でもあります。
 そんな曰く付きの作品がタイで撮影できるはずもなく、この映画の大部分はマレーシアで撮影が行われています。そして、多くのマレーシアの舞台俳優が起用されているという意味でも、非常に興味深い作品になっているのです。
 
Sean Ghazi
 映画はジョディ・フォスター演じるアンナがシャムに上陸するところから始まります。その後をあたふたついて行く2人の召使い。Mano ManiamとShanthini Venugopalです。前回ご紹介しましたが、Manoはアクターズ・スタジオ作品「A Man for All Seasons」のオリジナル・キャスト。私たち国際交流基金がプロデュースした日馬共同制作作品「あいだの島」でも重要な役を演じてくれました。Shanthiniは、Instant Cafe Theatre Companyの多くの作品に出演する一方、自らJumping Jellybeans Investigative Companyという児童向け劇団を作って活動しています。Jumping Jellybeansは、今年1月に公演をおこないましたが、まもなく次回作を発表するとのこと。子供向け演劇作品が少ないマレーシアにおいては貴重な存在です。
 物語の一つのクライマックスは、王の後宮に召された側室の一人が、かつての恋人と手紙を交わした罪を問われ、処刑されるシーンです。アンナの度重なる助命の願いをはねつけ、王は処刑を命じます。しかし、刑が執行されるそのとき、王は一人寺で祈りを捧げるのです。絶対権力者でありながら、「王」の権威を守るために理不尽をも受け入れなければならない彼の姿と、自らの愛に殉じる若者たちの潔い姿が対置され、忘れがたい印象を残します。処刑される恋人役を演じたのはSean Ghazi。ロンドンのウェスト・エンドでの出演経験もある彼は、ヴォーカリストとしても高い評価を得ています。「I Have Dreamed」と題されたコンサートを終えたばかりですが、今後も芝居やコンサートに頻繁に登場することでしょう。
 
 この他にも、シャムの忠実な首相役に2002年度の国家芸術賞受賞者のDato' Syed Alwi、王の親衛隊にコメディアンの(とはいえ、今回はシリアスな役ですが)Harith Iskandarなど、マレーシアの芸達者が多数出演。ちょい役でもPatrick Teoh、Zaibo、Ellie Suriaty Omarなど、マレーシア舞台芸術の「顔」たちがずらりと並んでいます。VCDやDVDでの入手も簡単ですから、この映画で「予習」して、彼らの出演作を劇場に見に行く。こんな楽しみ方もありかもしれません。
 
 
<本稿は日馬プレス第274号(2004年5月16日)に掲載されたものです。>
     
 
ここに掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権はA. P. PRESS (M) SDN. BHD.またはその情報提供者に帰属します。
POWERED by Minamikaze Digital Animation Studio Enterprise