亜州舞踏青年網路 発展会議2004
国際交流基金 滝口 健
 
 多民族国家であるマレーシア。それぞれの民族が自らの文化をかなり純粋な形で維持しながら共存しているこの国のあり方が、舞台芸術にも影響を与えないわけがありません。この連載では、我々外国人にももっとも親しみやすい英語劇を中心にご紹介してきましたが、マレー語劇、中国語劇、そして(非常に少数ではありますが)タミル語劇の世界もそれぞれに極めて魅力的なものです。
 
 今回は、6月28〜30日に開かれた「亜州舞踏青年網路発展会議2004」についてご紹介します。これは、タイトルからもお分かりのように、中華系の演劇人が中心となり、若手のダンサーのネットワークを形成することを目的に開催されました。初日のプログラムでは、プドゥ刑務所近くのPurple Cane Tea Square内フリースペースに設けられた会場と、香港の城市当代舞踏団(City Contemporary Dance Company: CCDC)のスタジオを、インターネットを通したテレビ電話で結び、それぞれがパフォーマンスを披露するという趣向になっていました。それにしても、ごく普通のラップトップコンピュータ1台で(低画質とはいえ)、香港とリアルタイムで同期できるのですから、すごい時代になったものです。
 
 このプロジェクトの仕掛け人はOng Yong Lock。マレーシア生まれの彼は89年から香港ダンスカンパニーとCCDCで活動を始め、現在は自ら旗揚げしたUnlock Dancing Plazaというカンパニーで活躍しています。彼が中心となり、マレーシアのLee Swee Keong(アクターズ・スタジオの「Rashomon」にも出演していました)らが協力して、2003年にYouth Studio of DanceがKLに設立されました。これは、10代後半〜20代のダンサーをトレーニングするとともに、アジア地域のネットワークを構築することを目的としています。今回のプロジェクトは、そのための第一歩との位置づけです。
 
 KL会場には、シンガポールのKuo Jing Hong(シンガポールでもっとも高名な劇作家、故Kuo Pao Kun氏の娘さんでもあります)、台湾のTan Wai Teiらの一線級のダンサーも駆けつけ、パネリストとして議論に参加するだけでなく、それぞれがワークショップを開催しました。まさに中華系のネットワークの広がりを見せ付けられたという感じです。
 
 パフォーマンスのあとはフリーディスカッション。その最後にコメントを求められたので、このようにいいました。「このプロジェクトに参加したYouth Studio of Danceのメンバーがうらやましいです。彼らは今日、遠く数千マイル離れた香港にも志を同じくする仲間がいることを確認できました。それはとても心強いことだと思います。国内だけにとどまるのではなく、海外にも常に目を向けることができる環境があるということは素晴らしいことです。」
 中国語という共通言語を媒介にし、民族的なルーツを同じくする人たちが国境を軽々と飛び越えていく。すごく「華人的」だと思いませんか?
 
<本稿は日馬プレス第278号(2004年7月16日)に掲載されたものです。>
     
 
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