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未来の演劇人を育てるために〜
マレーシアの児童演劇 |
| 国際交流基金 滝口
健 |
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| 小学生の頃だったか、あるいは中学生のときだったでしょうか。記憶があまり定かではないのですが、数年に一度、学校で「演劇教室」というのが開かれていました。田舎町に育った私には、それが唯一演劇に触れるチャンスでした。多分、何本かは見たのだと思いますが、今でも鮮烈に覚えている作品があります。それは、レジナルド・ローズ作「12人の怒れる男」の翻訳劇でした。映画化もされ、名作の誉れ高いこの作品ですが、私にとっては「12人の怒れる男」といえば、学校の体育館の固い床に座り、食い入るように見つめたあの舞台なのです。もう劇団の名前も忘れてしまいましたし、所詮は学校の体育館での上演ですから、こった装置や照明が使われていたとも思えません。でも、私にとっては、その舞台は確かに本物でした。「芝居って面白い」と思った最初でした。 |
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| こどもの頃の経験は、長くその人の嗜好を支配するのかもしれません。また、感受性が豊かなこの時期には、大人になってからでは見えないものを舞台の上に発見できるのかもしれません。こどもの時代に良質の舞台芸術に触れる機会を豊富に持つことができれば、それに関心を持つ子も出てくるかもしれません。次世代の観客、次世代の演劇人を育てる意味でも、こども向けの演劇は重要な意味があると言えるでしょう。 |
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| マレーシアでは、各州にある公立の劇場が折に触れてこども向け演劇を上演したり、文化芸術遺産省が地方での演劇ワークショップを実施したりしていますが、すべてのこどもに機会を与えるという理想からはほど遠い状況にあります。民間でも、Shantini
Venugopalらが中心となって設立したJumping Jerry Beans Companyなどによるこども向け作品が上演されたり、The
Actors Studio Academyによるティーンエイジャー向けのワークショップが実施されたりしていますが、まだまだ数が多いとは言えません。 |
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| ただ、最近は徐々に変化が見られます。2〜3年前に比べ、こども向け作品の上演数が増えてきているように思われるのです。さらに、昨年12月に「Violet
and Angel」をロングラン上演したGardner & Wife Companyなど、これまで児童演劇にはあまり取り組んでいなかった劇団もこども向け作品を上演し始めています。これに加え、今年2月〜3月には、外国の劇団による児童演劇がKLで相次いで上演されることになっています。 |
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| スウェーデン大使館とアリアンス・フランセーズの共催で3月2日から上演された「星の王子様」は、サン・テグジュペリの原作をスウェーデンの人形劇団が上演する試みでした。原作に忠実に作られながらも、視覚効果の工夫などでこどもを飽きさせない工夫が随所になされており、非常に誠実な舞台となっていました。特に、劇中の宇宙のシーンでは、ハイテクはいっさい使わず、人形劇の特質を活かしながらも浮遊間にあふれ、そして何よりも非常に美しい、印象的なシーンに仕上がっていました。 |
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| 日本も負けていません。2月15日には劇団「風の子」がアクターズ・スタジオで公演をおこないました。日本の伝統的な遊びを取り入れた舞台の終了後は、ロビーでこどもたちが実際に遊ぶことができるように工夫されていました。こどもだけではなく、いい年をした大人たちも剣玉に夢中になっていましたが。 |
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| この原稿が掲載される号が出る頃(3月15日、16日)には、人形劇団「ひとみ座」が同じくバングサショッピングセンター内のアクターズ・スタジオで公演をおこなっている筈です。こちらも定評のある実力派劇団の公演とあって、期待が高まります。 |
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| さらに、6月には文化芸術遺産省主催によるこども演劇フェスティバルが開催される予定です。マレーシアだけではなく、世界中からこども向け演劇を集めて上演する企画で、先の「風の子」公演のときには、文化省の担当者が早速参加打診をしていました。その他、イタリアやシンガポールの劇団とも交渉中と聞いています。
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| 小さなお子さん連れではなかなか劇場には足を運びにくいものですが、こども向け演劇なら話は別。客席からのこどもの笑い声や叫び声が舞台の上の役者を活気づけます。今年はご家族そろってこども向け演劇にお出かけになってはいかがでしょうか。
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| <本稿は日馬プレス第294号(2005年3月16日)に掲載されたものです。> |