シンガポールアーツフェスティバル
国際交流基金
滝口 健
 
 6月になりました。毎年、6月になるとマレーシアの演劇関係者はこぞって南へ向かいます。東南アジア最大の舞台芸術祭、シンガポール・アーツフェスティバルの時期だからです。数時間でいける隣の国ですが、演劇事情は相当に異なります。素晴らしく整備されたオンライン・チケッティングシステムのおかげで(マレーシアにもこのシステムがあればいいのに、といつも思うのです)席の予約も簡単。今回は、いつものクアラルンプールをちょっと離れて、お隣のシンガポールのフェスティバルについてご紹介します。
 
 シンガポール中の主要な劇場全てを会場として1か月にわたって開催されるこのフェスティバルは、Ontological Hysteric TheaterやEa Solaといった、世界的に名をはせているカンパニーの作品を観ることができる貴重な機会となっているだけでなく、Theatre WorksやNecessary Stageといったシンガポールの主要劇団の新作が発表される舞台としても注目されています。日本からも、Dumb Typeや大駱駝艦、パパ・タラフマラといった著名なカンパニーが過去に公演をおこなっています。音楽、ダンス、演劇それぞれのメインプログラムに加え、児童演劇や「レイトナイト・シリーズ」と呼ばれる実験的な舞台作品などをあわせると、数十に上るプログラムが組まれます。
 期間中は、Esplanade、Victoria Theatre、Jubilee Hallといった市内の主要劇場で連日公演がおこなわれるほか、様々なアウトリーチプログラムが組まれ、町中のいたるところでパフォーマンスが繰り広げられます。まさに、シンガポール中がアートに浸る1か月といえるでしょう。
 
 このフェスティバルを運営しているのはシンガポール・ナショナル・アーツカウンシル。「芸術」を国のイメージ戦略として強力に支援しているシンガポール政府によって設立された芸術振興のための組織です。プログラム編成を一手に任されているGoh Ching Leeさんは、欧米はもちろん、日本にも頻繁に出張して作品を買い付けてきています。
 今年のラインアップも国際色豊かです。イギリス、フランス、アメリカ、中国といった国々に加え、セルビア・モンテネグロやモンゴル、デンマークなど、普段はあまり作品を見る機会のない国々からも参加があります。
 
 中でも注目なのは6月10日と11日に上演される、クウェートのThe Sulayman Al-Bassam Theatre Companyによる「The Al-Hamlet Summit」でしょう。この作品は、東京国際芸術祭2004でも上演され、大きな反響を呼びました。ハムレットの登場人物たちを、サミットを思わせる舞台装置の中に置き、湾岸戦争からイラク戦争にいたる中東での政治的欺瞞を鋭く描き出す(以上、東京国際芸術祭の上演資料の要約)この作品、アラブ演劇界からの痛烈なメッセージとして欧米でも高い評価を得ています。
 
 今年のフェスティバルは5月26日から6月26日まで。スケジュールやチケットの予約はウェブサイト(www.singaporeartsfest.com)で確認できます。6月にシンガポールへお出かけの際には、ぜひフェスティバルにも足を運んでみてください。
 
<本稿は日馬プレス第299号(2005年6月1日)に掲載されたものです。>
     
 
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