キャメロン・ハイランドには、とくに日本の夏と冬、つまり7、8月と1、2、3月に数百人の日本人ロングスティヤーが集中して滞在している。
ここにいる大多数の人たちはマレーシア・マイ・セカンド・ホーム・プログラム(MM2H)のビザをもっていない。比較的自由に滞在し、満喫すると日本に帰る人がほとんどだ。もちろん、MM2Hの滞在資格を取って、クアラルンプールやペナン、あるいはイポーで生活をはじめている人が、気分転換にやってくることも多い。
ここキャメロン・ハイランドでも、ロングスティ本やテレビを見て、月に6万円で生活できると信じてやってきた人も大勢いる。国民年金だけで暮らせるからという理由でマレーシアにやってきた人たちを、同じロングスティヤーの中で自覚的余裕がある(ように見える)人が「経済難民」、「年金難民」と呼んでいる。揶揄しているように見えるが、「経済難民」のロングスティヤーの中に、ホテルの朝食ブッフェにタッパウェアーやペットボトルを持っていって、昼食用に持ち帰ったり、格安料金のゴルフ場でクラブハウスではないところからコッソリ入ってグリーンフィーを払わずにプレーをするというような破廉恥な行為をやって、注意されると「何でいけないの?」とケロッとしている人たちが結構多いからだ。揶揄しているというよりも、日本人として恥ずべき行為を、あるいは日本でなら絶対やらないような卑しい行為を、恥ずかしいと思わずにやっている人たちを非難しているのだろう。
揶揄したり、注意したり、公表したりすると、必ずといっていいほど出てくるのが「かわいそうじゃないか。小さな日本人社会で揶揄したり、注意したりすれば、すぐにみんなに知れ渡る。そこまでやる必要はないでしょう」と、いかにも善人面をして、太っ腹ぶった、新興宗教の信者総代みたいな人たちだ。こうやってかばう人が出てくると、破廉恥な人たちは免罪符をもらったような気になって、ますます言動が大胆に非常識なほう意向にエスカレートする。件の善人面した人はというと、「またあいつが何だかんだと言い出すから、目立たないようにしなよ」と、当然のことを注意する人たちを悪者にしてしまう。まるで、中国や北朝鮮、ミャンマーの政府が非難された国をかばいあい構造に似ている。出来の悪い小学生と、その子供を注意した先生や周囲の人に、「何の権利があって、この子に注意するの!!」と言いつのっている馬鹿親と同じだ。
自分の幼ない子供に、いいことをしたらほめ、悪いことをしたら叱るのは親の義務だ。その義務を果さない親がいるから、常識では理解できないような凶悪犯罪をやって、逮捕されても悪びれない若者たちがふえる。幼児であっても、中高年であっても、やっていいこと、悪いことの区別がつかない人に、「そんなことをしてはいけない」と注意し、叱るのは大人の義務だ。
キャメロン・ハイランドやペナン、クアラルンプールでのロングスティヤーの破廉恥な行為を、「ロングスティの恥はかき捨て」に書いたことがあるが、書かなければ、いつまでもやる人たちなのだ。「小人閑居して不善をなす」とも書いたことがある。
キャメロン・ハイランドにAさんという人がいる。AさんはMM2Hの資格はない。それなのに、5年も住みつづけている。近隣の国に出ては戻ってくるというのを繰り返している。MM2Hで銀行に15万リンギを定期で預けておけば利息で、格安チケットが売り出されたときに日本往復航空チケットを買うことができる。Aさんはマレーシアに定期預金はないし、年金生活なので日本往復航空チケットなど何度も買うことはできない。だから、近隣の国に出るしかないのだろう。
キャメロン・ハイランドから一番近くて安いのは、バスツアーでタイ南部の都市ハチャイに行き、2、3日過ごして戻ってくる方法がある。これを繰り返し、マレーシアの出入国管理局(イミグレーション)が暗黙の了解をしてくれる年間180日以内の滞在を無視している。民間企業の中には、現地採用したスタッフや駐在員、中長期出張者などを同じやり方で、ワークパーミット(就労ビザ)が発給されるまで滞在させることがある。そのやり方をする日本企業のほとんどは、ワークパーミットを申請している間のやむをえない措置と考えて、ビザ発給を急いでいる。そういうやり方は、3ヶ月の滞在許可のスタンプがあっても法律的には違法であることは皆知っている。しかし、少なくとも、日本の企業やビジネスマンはマレーシア経済の発展、工業力の成長に大きく寄与しているし、二度目には、いったん日本に戻って仕切りなおしをする。
近隣国に出たり入ったりで滞在を継続するのは、表面的には、パスポート上は合法だ。しかし、一年間に三度以上出たり入ったりを繰り返すのは好ましくない。最近日本で問題になった、偽装結婚によってビザ(滞在許可)を得た中国やフィリピンの女性がパスポート上は合法であっても、実際の結婚生活がなく、夜の仕事をして稼いでいる。彼女らの中には、警察やイミグレーションによる摘発で逮捕され、強制送還されてしまっやものも多い。こうした偽装工作をビジネスにしているのは暴力団の下請けや、暴力団の予備軍のような人たちだ。
Uターン・ロングスティヤーの考えたビジネス
このAさんは、最近では、自分が滞在許可の更新にタイに行くときに、キャメロン・ハイランドにロングスティしている日本人の間で参加者を募集して、ツアーを組んで小銭を稼いでいるという。自分がタイに行き、滞在する費用を稼いでいるのだ。同じようなことをしているロングスティやーのことをペナンでも聞いたことがある。
Aさんはロングスティの日本人が多く宿泊しているホテルにツアー参加者募集のパンフレットを張り出したり、日本人が多く住むアパートメントのポストに投げ込んだりしているという。つまり、Aさんは個人で収益事業をやっているのだ。これは言うまでもなく不法就労になる。前述の偽装結婚による滞在と大同小異だ。
Aさんはキャメロン・ハイランドのある高級ホテルに一ヶ月契約で滞在したのに宿泊料と電話代が払えずに、ホテルから追い出されたことがある。ホテルへの支払い金額は全部で日本円で2,30万円だったという。
ホテル側はキャメロン・ハイランドの日本人団体に応援を求めた。Aさんの娘婿は生活に余裕はあるらしい。電話代のほとんどは日本への国際通話、つまり、娘と娘婿に送金を頼んだが、うまくいかなかったらしい。娘婿は岳父の行動に不満だったのか、実の娘は娘婿に金銭をたかる父親に呆れていたのか、全額を払いきるのに1年半もかかっている。
また、Aさんはイスラム系の女性とドアを締め切った一つの部屋にいたときに、宗教警察に踏み込まれて拘束されたこともあるという。このときのことは、Aさんに悪意はなく、Aさんはイスラムの女性とドアを閉めた部屋に一緒にいるのは許されないことということを知らなかったのだろう。そして、たぶん、Aさんを好ましく思わない誰かに密告されたに違いない。気の毒だったと思うが、無知は罪悪になることもあるのだ。
こういう問題の多いAさんだが、日本の外務省のスタッフのT氏のキャメロン・ハイランドにおける連絡役を仰せつかったり、マレーシアのロングスティの受け入れをしている老舗で比較的信用されているT社のキャメロン・ハイランドのロングスティの説明役になっていた。また、もっともよく読まれている旅行ガイドブックの「地球の歩き方」には「3ヶ月ごとに出入国を繰り返せば問題ない」というようなAさんのコメントが載っている。
それらが、Aさんのバックボーン、自信の裏づけになっている。ロングスティに限らず、日本人をだます人たちは、必ず、一般的に信用されている日本人の団体や企業、公的機関との関係、マレーシア政府との関係を誇示してくる。うまい話、いい話だけをして、自分の世界に引き込んでしまう。Aさんも、そういうタイプなのかも知れない。 |