#159『アレキをたずねて(2)』
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 新しくブルーの屋根がついたチャイナタウンは、ギラギラの太陽はしのげるが、熱気がムンムンしていた。ネパールの宝石店は10店以上あった。中はよっぽど蒸し暑いかと思ったら、コンクリで造られているせいか逆にひやっともする。最近はよく天珠を見かけるが、これもたくさんあった。天珠は、茶色、赤茶、または黒に白で独特な文様が描かれている。紀元前のチベットから伝わる聖なるお守りで、瑪瑙から造られている。名前を聞いてピンとくる人はあまりいないかもしれないが、見ればわかると思う。

 私は1店1店しつこく「アレキはありますか?」と聞いて回った。ある店では「ない、ない」とすぐ答えるおじさんもいたし、「はい」と小さな宝石箱から出してくれた数店のおじさんたちは、頼んでもいないのにきまってペンライトで光を当ててくれて、「どうだ、色が変わるだろう」と太陽の光と比べてくれた。でもそれが、全部各店で違う色ときた。水色のもあったし、うすミドリ、濃い紫。私は騙されているんだか、何がなんだかわからなくなってしまい、とりあえず色が濃くカットも見栄えのよい紫の石を買った。大きさにして2カラット以上はあるかもしれない。ライトを当てられたその石は、赤く変化していた。

 家に帰る道中もなんだか納得しない。本物でなくてもいいや、という気持ちも少しあって買ったものの、帰った後インターネットでまたアレキについて調べてみたがどこにも紫と言っているところはない。

 「ミドリじゃないんだから、アレキザンドライトじゃないことぐらい、気づけよー」と自分に怒りたかったが、まあ大金はたいて買った宝石ではない、たかがRM10だ。その石はどこから見ても正真正銘のパープルで、特徴といえる色は微塵にも発色していない。赤に変化するのは、単にそのカッティングからかもしれない(それも、息子に指摘されて気がついた)。よく考えてみても、いくら価値が低くったって、本物ではカンチルが何台も買えるほどの値段の石がRM10になんかなるわけないんだ。

 そのあとわかったことなのだが、クリソベリルという種の特殊効果(変色効果)「チェンジ オブ カラー」を持つ石をアレキサンドライトとも言うらしいのだ。従ってネパール商人はカラーが変わるのは何でもアレキザンドライトとして扱っているのだろうか。これなら騙しにもならない。そのうち、まあ、石ならいいかっ、なんて感じになってきた。もしかしたらガラスかもしれないもんな。

 私は石の見方をまだ知らない。よく言われているのは色、内包物、輝きの3点からチェックし、それぞれにABCの3段階のランク付けを行ない、その総合点でひとつの色石を評価するといいと言われている。そして、総合評価に対する価格を比較検討することで、より明確な色石を鑑別する眼力と、適正価格を知るようになっていくのだと。私はまだまだいろんな物を見て歩く経験が浅すぎる。でもやっぱり石のおもしろさは、その神秘的な美しさと同様に、たとえ同じレベルの石でもバイヤーによっても、採れた時期やその時代の人気によっても値段が違い、タイミングと運というのも十分にしてあることだ。すなわち、市場価格なんてあってないようななもので、さらに言うと、自分が本当に店頭でハッと引き付けられたものは、いいものなのだということだ。自己満足の世界にもなってしまいそうだが、それぞれに違う自分の美に対する感覚は大切にしていいと思う。素直に惹かれた石に無理やり3点チェックを当てはめることもない。
(つづく)
本稿は日馬プレス第298号(2005年5月16日)に掲載されたものです。
 
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