サイチョウとオオハシ。その違いがわかるだろうか? 私はつい最近まで同じだと思っていた。だって、色といい大きなクチバシや体つきがそっくりだから。オオハシはキツツキを含むキツツキ目、サイチョウはカワセミやブッポウソウを含むブッポウソウ目に分類される種類の鳥たちなんだそうだ。サイチョウは東マレーシアのサラワク州のシンボルともなっていて、英語ではHornbillという。英語でToucanのオオハシとは違って嘴の上に何か重そうなドデカイ物が付いる。サイチョウが東南アジアの熱帯雨林に生息し、オオハシは南米の熱帯雨林に生息している。
以前サラワクに行った時、ジャングルで野生のサイチョウを遠くから見たことがあるが、KLのバードパークに行って、サイチョウが身近に見られ、その迫力に驚いてしまった。バードパークは、檻の中に鳥達が閉じ込められているのではなく、かなり大規模なネットを張り巡らせた中に鳥達を放し飼いにし、頭の上を鳥たちが自由に飛び交っている姿を見られる。だから、野生ではめったにお目にかかれないサイチョウも、ここでは人間の周りをバサバサと飛んで驚かされるほど近くに感じることができる。
日本でも、こうした自然に近い環境の中で、生き物が観察できる自然動物園へと変身している所もあるようだ。
KLのバードパークは、太陽が照りつける日中はとても暑く、結構な距離を歩くのでちょっとしたトレッキングのよう。突然目の前に孔雀が現れて、カラフルな羽をひろげてくれたかと思えば、頭上で黒いどでかいものが横切る。サイチョウは、小さくて40〜50センチ、大きなものは1メートルくらいだそうで、攻撃される前の探知か、威嚇か、と思わせるほどの低空飛行。熱帯気候にマッチしている大胆な色、その上大声で鳴くので目立つことこの上ない。
動物を何時間見ていても飽きない私だが、これまであまり鳥の観察をしたことがなかった。ちょっと立ち止まってサイチョウの行方を追ってみることにした。1羽が木の枝か地上に降りたつと、必ずもう1羽が同じようにくっついて来る。そのうち、つがいなんだな、ということがわかった。あたりを見回してみると、他のカップルも同じようなことをしていた。1羽が飛び立ち、着地しては相手が後を追い同じ事を繰り返す。そして嘴をくっつけあったり、食べ物もシェアしながら一緒に食べている。
その仲睦まじいその姿は、ずっと見ていても飽きなかった。鳥に言葉があるかわからないが、彼らのラブラブの会話が聞こえてきそうだった。
サイチョウの習性は調べてみると、とてもおもしろいものだった。繁殖期がくるとオスはメスが入れるぐらいの木の洞を地上10メートルほどの所に見つける。そしてそこにメスを招き、中にメスを入れたまま、泥や木片、糞などで、その入り口を塞いで塗り固めてしまうのである。ちょっとあぶない監禁のようで、なんとも気の毒な気もする。その入り口は、メスのクチバシがわずかに見える程度。わずかに開いた入り口からメスへの食事をせっせと運び、メスが卵を温めている間3か月以上は、自分はろくに食事も取らず、メスのためにひたむきにつくすのである。
だんなさんにとっては試練の毎日だ。 この間、メス鳥は穴から一度も外へは出ない。出ないというより出られないのだ。その不安からか、メス鳥は落ち着かなく、それをなだめるオス鳥のしぐさは感動ものらしい。メス鳥は穴にはいる前、オス鳥は体を摺り寄せたり、くちばしを合わせたり、最後にはお尻を突っついて穴に押し込む。ぜひとも見たいものだ。メス鳥が穴に落ち着くと、オス鳥は、最初はメス鳥の餌を、雛が餌を食べるようになると両方の餌をせっせと運ぶ。おもに木の実である。そのうちに雛が大きくなってオス鳥が運ぶ餌だけでは間に合わなくなるころ、どこからともなく2、3羽のヘルパーがやってくる。また、オスが途中で力尽きてしまった場合は他のオスがその巣の子育てを引き継ぎ、メスとヒナを守るということも知られている。
やがてヒナがその姿を見せる頃になると、オスはすっかりとやつれた姿になるが、それに比べて巣の中でずっとオスからの貢物を頂戴していたメスは、羽も生え変わって体のツヤもよく、見違えるほどになるらしい。鳥をはじめ動物の世界に子育ての教科書はない。それでも自然の営みの中で役割を身に付けていく動物の習性や業には、いつも感心させられることが多い。うちのうさぎだってそうだ。誰が教えることもなく、自分の2種類の糞を、コロコロうんこはそのまま捨てるもの、やわらかい方は、ビタミンが多く含まれているので、地べたにはせず、おしりまで口をもっていって食べてしまう。
サイチョウには、こんな自然の節理と、離婚や家庭崩壊の多い世の中で夫婦のつながりなど学ぶべき事が多い。 |
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| 本稿は日馬プレス第300号(2005年6月16日)に掲載されたものです。 |
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