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★美景「熱い絹」の地へ (その3)
帰りは、ジャングルウォークからキャンプ場に向かう。そこから車道に出て川沿いに歩いて気品を感じるオールドスモークハウスに着いた。
「犯罪率はゼロだよ。ここは小さな町の中で、みんな顔を知っているからね」「こうして一部の場所の樹を切って、ゴミを集めゴミ隠しのために土をかけ、意味のない空き地ができるんだ」
運がよければ見ることができるかもしれないという、オーキッドネックレスを発見できた。とても珍しい蘭で、茶系の蘭の花だけがネックレスのように長く繋がっていると想像していただきたい。
私たちのトレッキングが終わったのは夜の8時で、その時間ともなると、空気が一段と冷えてくる。どこのお店もエアコンはおろか扇風機さえ回っていない。お腹をすかせた私たちは、すぐに食事へと駆け込んだ。食事は文句無しで、「ここのデザートはオーナーのホームメードで何でもおいしいよ」と薦められたので、アップルパイを最後に注文した。いつもはコーヒー派だが、ここはもちろんキャメロンの紅茶と一緒に。デザートもすばらしく、申し分なかった。
こうして、リャウ先生は一生医師としての仕事を続けていくのだろう。小ぢんまりとしたこの町で、ささやかに、そして自分の興味があることに生きていくのだろう。人の生活というものは、もちろん色や柄こそは違うが、平凡な一瞬一瞬の繰り返しから毎日が紡がれていくのは誰しも同じだ。いつも見過ごしている何気ないその一瞬こそが、本当の輝きだったりする。リャウ先生は、たくさんの物を消費したり、儲けたり、作ったりする人とは反対のライフスタイルを持っている。携帯電話さえ不要らしい。何もなくても心も暮らしも豊か。私の最近知り合ったばかりの日本人の友人にもこういうスタンスの人がいると想いをはせた。「一応人間だし、食べなくっちゃなりませんからね、でも好きな事だけしかしていませんよ」と言う彼に私は興味を感じる。
キャメロンハイランドは低いほうからリングレット、タナ・ラタ、ブリンチャンの町からなっており、ブリンチャンまでは上り道だ。ブリンチャンは、バタフライパークだのローズガーデンだのとにぎわっており、道沿いではいたるところで野菜が売られている。また、ホテルも多い。中心町タナ・ラタは、大きくはないがにぎやかな町で、たくさんのエコノミーホテル、お店、レストランが軒を並べている。
一方、リングレットからタナ・ラタにいたる中間地点には、BOH TEA プランテーションがある。前回も来たこのボー紅茶工場に私たちはまた訪れてみた。BOHのサインボードから枝分かれした山道を走るのだが、その広大な紅茶畑に囲まれた丘陵間の細い道は、のどかで、日本の田舎をも思わせ、とにかく気分が爽快になる。澄み切った小川に、あざやかなブーゲンビリア、茶摘み労働者の長屋が点在し、一面空と茶畑しかない。のぼりつめたところ一角には紅茶工場と紅茶喫茶「Ummph」があり、通常旅行客はここでまた一服ができる。
でもちょっと残念なところは、いろいろなフレーバーがあるのだが、それらはみんなどこのショッピングセンターに売っているTEA BOHで、1パックをマグカップに入れて熱湯をそそぐだけだ。せっかくオリジナル発祥地に来ているのだから、何かここキャメロンのBOH TEAでしか飲めないものとか、工夫をしてほしいものだと思う。しかし何といっても広大な茶畑の景色を堪能しながら、ティータイムも楽しむのは、ここ以外のどこでもできない。自然の澄んだ空気を吸い込みながら、レモンタルトで、こんな素敵なティータイムはちょっとない、と思った。ここからさらに、丘陵を登ることができる。上からの眺めは、あたり一面紅茶畑でその大規模さに驚かされる。その絶景たるや、息を切らしながら登ってきた甲斐があった。頂上で草の上に寝転ぶ。こうしていつまでもここにいたいと思った。(yoko)
本稿は日馬プレス第280号(2004年8月16日)に掲載されたものです。