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★オンラインの裏に蠢く罠(1)
一部を除いて、どこの国の子どもたちも今は同じような境遇にいるのかもしれない。マレーシアの子どもたちも、特に都心部では先進国の子どもたちと変わらないゲーム世代にあるわけで、世界中どこの国でも都会というのは変わりのないような感じがする。インターネットが普及してからは、特に。自然の多い、熱帯の国マレーシアだから、子供たちももっと外で遊びなれたやんちゃ坊主、野山を走り回って鍛えられた肉体は筋肉もりもり、とばかり想像していては、大きな間違いなのだ。都会にいると、ファストフードにほおばってコーラを飲み、コンピューターにかじりついている子供ばかりが目立つ。これは、余談だが、先日現地中高等学校の運動会を覗きに行ったら、生徒全員が行進を終えてグラウンドの中心に集まり、校長や市長などの挨拶が始まると、あっちで1人、またこっちで1人、とバタバタと貧血で倒れていく子供たちが出てきた。これは、おおげさな話ではなく、本当の話だ。そして、競技が始まった後にも、一競技が終わるごとに2人くらいずつバタンバタン、と倒れていく。倒れた子供たちは、あらかじめ用意されていた応急処置のござを敷いた地べたにタンカーで運ばれて寝かされるのだが、その応急場所も横になっている子でいっぱいになり、とうとうござの敷地を拡大している始末だ。
一昔前にマレーシアの子どもたちの間でも流行っていたプレイステーションも、今ではオンラインゲームとってかわられている。これらゲームは所詮奥行きのない、薄っぺらい映像と遊びの世界だ。身体を使わない楽な遊びが増えた結果、心だけ喜ばせておいて身体はおいてきぼりで、肥満の子供も多くなってきた。いや、心にしても楽しいかのように錯覚しているだけなのかもしれない。そして世間で問題にもなっているように、バーチャルと現実の区別が困難になっていったら、もうデンジャーゾーンだ。先日日本でも、小学校6年生の女の子が同級生をカッターで切り付け死なせてしまったり(友人を殺し合うストーリーゲームの影響とも見られている)、オンラインゲーム中毒になったあげく、何十人ものユーザーIDとパスワードを盗んで逮捕されてしまった小学校6年生の男の子。サマーフェスティバルで、何かビッグ・ニュースを起こしたくて人をナイフで刺して殺してしまった高校1年生の女の子2人組。ゲーム産業には、商売のためにそのおもしろさや、ユーザーがその錯覚から覚めないように刺激をエスカレートさせていかなければならないという宿命がある。そしてなによりも作っている側は、あまり子どもたちへの悪影響を考えないで、目の前の利益だけに目が眩んでいる傾向がある。
一時期、うちでもやっかいなゲーム中毒が発生した。何かにのめり込むと一途になってしまう性格の次男がオンラインゲームに蝕まれてしまったのだ。ゲームで遊べる時間は、宿題が終わってから夕方の5時から2時間だけと制限していたのにもかかわらず、その几帳面なのめり込みタイプの性格によって、知らず知らずのうちに心がゲームに100%支配され、完全にコントロールされてしまったのだった。反対に長男は、親に怒られるまでコンピューターをいじくるということはなく、ちょっと遊んでは、もういいや、という感じでコンピューターの場から離れていくタイプ。本当に性格の違いだ。
(つづく)
本稿は日馬プレス第281号(2004年9月1日)に掲載されたものです。