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原点にもどりたい、シンプル・マレーシアンライフ   その2

   ここで、ちょっと2人の農園ストーリーを説明したい。  
 山すそのゆるやかな斜面が、谷底に流れる川にむかって平らになる部分の10エーカー に、農学部出身のガンさんがファームを開園したのは1994年。果物と野菜畑、ファームハウス、複数の堆肥小屋などがあり、水源は上流のジャングルから敷地へ流れ、小渓流は公式プールのサイズの貯水池に引かれている。   
 水は透き通っていて、すごく冷たい。行った時には、所々の小渓流の小池に白とピンクの大きなスイレンが花を咲かしていた。
 それまでやってきた農薬販売ディーラー、大規模慣行農業経営、といった肩書きをいっさい放り投げ、オーガニックの道に入ったガンさんは、当時のマレーシアでは、他に参照できる技術的なノウハウもなく、ハイテクもなにもない、自然にそったクラシックな方法で試行錯誤を繰り返し、農園の土と生態環境を少しづつ向上させてきた。採れた野菜の市場も存在せず、知人宅やレストランを一軒一軒説明しながら開拓してまわる日々。当初、世間の反応は鈍く、オーガニックという言葉さえ聞いたことのない人がまだ一般的だったという。しかしそのオーガニックに傾ける情熱は並でない。
 外国人に人気の高い西洋野菜や高原野菜は熱帯低地の農園での有機栽培は難しい。でも、食べ物はなるべく地域でつくられ、地域で消費されるべきで、その土地環境、気候に合って成長した野菜を食べることが、人間、身体の成長にもよいのだ、というポリシーを語ってくれた。
 そして、できれば農園に来て、畑づくりを見て、化学薬品を排除し多くを手作業に頼る野菜づくりの難しさや、天候に大きく左右される品質、また頑固な妥協をしない彼らの姿勢と夢を共有していく、といった生産者と消費者の双方向コミュニケーションの大切さを説いている。

 さて、ファームに到着してエントランスで迎えてくれたのは2ひきの犬たちと、太陽のように健康体がはじける、気さくな和美さんのご主人、ガンさんだった。その日、私たち一家は、ファームのメニューにある<お野菜ランチコース>を取ったために、かずみさんはエントランス近くにあるこじんまりとしたハウスで、私たちのランチの準備におおわれていた。 
 同コースはウエルカムドリンクからはじまって農園内のツアー、そして農場の家族と一緒にお食事といったコースだ。その他にも、ここではガイド付農園ツアーやファームステイ、WWOOFボランテイア(WWOOFは世界で広く実践されている有機農場のボランテイア制度。オーガニックファームで一日5〜6時間の農作業を手伝うことによって、ファームライフを体験するとともに、食事・寝床を提供される。ここは、2002年からマレーシアのWWOOF受け入れファームとして、国際WWOOF協会に登録されている)といったコースがあり、行った時も3人のプトラ大学の大学生が、ちょうどボランテイア滞在をしているところだった。
 手作り食品やソープなどの環境によいナチュラル製品もたくさんある。
 ウエルカムドリンクのリンゴとハイビスカスの自家製酵素ジュースに、とろけるような甘いパパイヤやバナナをいただき、大きな麦わら帽子を全員でかぶって、さっそく農園ツアー開始だ。(つづく)
 
 

本稿は日馬プレス第252号(2003年6月16日)に掲載されたものです。