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日本人にとって近くて遠い、なのに懐かしいマレーシア その1

    近く本を出すことになった。
 内容は、シニア向けのロングスティ。
 やるとなると、結構マニアックな性格で、あれもこれもと情報を詰め込み、試行錯誤の繰り返し。

 思えば17年前、私は友達に「マレーシアに住むことになったからさあ」と告げると、その友達は「ふーん、マレーシアアァァ・・・」となんだかわかったのかわからないのか気の抜けた返事をした。数日後、その友人と会った時、彼女は「あのさあ、マレーシアについてちょっと調べてみたんだけどさあ、なんかマレーシアって、他の東南アジアの国と比べるとすっごく平和だから、かえって何もニュースにならないで情報が少ないみたいなのね」と言った。私は「良くも悪くもニュースがないマレーシアかあ・・」とそれこそあいまいな気持ちで、よく本屋さんへ情報探しに足を運んだものだ。

 17年前というと、本当にマレーシアに関する情報本は少なかった。あっても、出版社や新聞社からの世界・アジアの事典のように、ちょっと硬めで国の概要は特徴、宗教、日本との経済関係を述べただけのものや旅行ガイド本で、個人で執筆されているのは、数冊だったように思う。あまり生きた情報、実際そこに長年住んでいる人たちが得たツボをおさえてくれた本はゼロだったのである。

 それが、今はどうだろうか。出てる、出てる、レストランガイドやゴルフガイドの詳細から、マレーシアに滞在経験をして、その魅力に取り付かれてしまった人による個人の体験談。 それもそうだ、こんなにおもしろいマレーシアなのに、平和そのもので何も語るべきものがない、というのはおかしい。もちろん、マレーシア側だって、外国人投資に大手を広げて歓迎しているわけだから、それなりに、観光やホテル、娯楽にも開発を投資してきた。


 マハティール政権が幕を閉じ、2003年11月からアブドゥラ新首相となっても、同じポリシーを継続しているマレーシアは、近隣諸国に比べても間違いなく穏健な国だ。それはおそらく、経済がすばらしく成長したからに他ならないと思う。インフラストラクチャーの整備も確実に進んでおり、クアラルンプール新空港、ツインタワーを中心としたKLシティーセンター、そして新行政首都移転を含んだマルチメディア・スーパー・コリドー、と矢継ぎ早に超巨大投資をしながら、2020年までに先進国入りを目指している。

 社会的に不満やアンバランスな整備が少しはあるものの、経済が発展して人々の生活がそれなりに豊かになっていく状況が実感でき、各民族間に経済格差があるとはいえ、それが紛争を呼び起こすほどひどくなく、政府はこの格差をなくすために手を尽くしている。それにマレーシアは、マレー系、中国系、インド系そして多数の部族に分けられる先住民で構成される多民族国家。それぞれの民族が持つ宗教(イスラム教、仏教、儒教、ヒンドゥー教 、キリスト教、原住民信仰)や、生活習慣、文化は混じり合っているようで、混じり合わない。お互い影響され、よい部分は取り入れているところもあるから面白い。こうして融合は独特な文化を生み、マレーシアの魅力のひとつを創り出していて、こうした調和こそが、アジアのよいモデルケースとなっている。
 

本稿は日馬プレス第270号(2004年3月16日)に掲載されたものです。