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★PASとマレーの性質 その真髄(2)

 
 さて、前回では、PASとは、そしてPASの根強さとは一体何なのだろうか、PASをイスラム原理主義政党と定義するのは簡単だが、なぜそういう政党を多くのマレー民衆は支持するのか。マレー民衆は、何に引き寄せられるのか?というところで終わってしまった。

 ケダ、ペルリス、トレンガヌ、クランタン州といったマレー人が圧倒的に人口を占めている州内の民衆草の根全体においてPASは本当に強い。
 ハディ・アワン総裁がイスラム国家計画を提出したように、イスラム国家樹立がPASの究極の目標だ。イスラム法に関しては、非イスラム教徒には適応されないとは言いつつも、厳格なイスラム法の適用を定めていた。他民族にとって、イスラムをよりイスラムである事を強調してしまうことは、イラン型になるのではないかという恐怖がある。  
 一方で、与党である統一マレー国民組織(UMNO)の敵はPASであり、「国民は、マレーシア人の基本的な権利を踏みにじり、政府を引き継ぐことを目的としたPASの計画に騙されるな。我々の国は現在のシステムのもとで発展進歩し、利益を得ている。未来をPASに預ける理由は全然ない」と酷評している。
 UMNOとしては、マレーシアというのは、すでにイスラムを国教にしイスラム勢力が主流である国である、と公言しており、PASの言うイスラム国家は、多民族にふさわしい融和とはならないというのだ。ここで興味深いのは、両党の争いの本質は、政党の政策などではなく宗教、つまりイスラム教を盾にした戦いであることだ(PAS指導者は神を持ち出すことの誘惑を決して隠そうとしていない)。でもPASの多くの支持者が今もって変わらないことは、単にイスラム原理主義を支持するからだけではない。それ以外の何かがある。

 その真髄は、ホームグラウンド・コミューンへのエモーショナルな心理だ。
 マレー人の本質はエモーションといわれている。それは、情的つながりの不可欠であり、人間関係が維持されている限り永遠と続く。ホームグラウンド・コミューンの感情が宗教という姿の上に投影した草の根マレー民衆。
 彼らは、自分達のコミューンを愛し、よそ者がそのコミューンに入るのを嫌がるし、外に出て行っても、外の人間とは付き合おうとはしない。それは、日本の一部地方にも見受けられる現象かもしれない。
 お祈りの時間、イスラム教育、宗教クラスなどを通じて一体になる。またはコーヒーやさんでのおしゃべり、一緒に遊ぶセパタクロー、協力をしあう結婚式や披露宴の手伝い。 クランタン州のPAS支持者は、PAS自身やニック・アジズが大好きだ。州政権はPASに、そして連邦はBNになってほしいというクランタニーズも多いところを見ると、やはり自州は自州で連帯すればいい、他は他でどうでもいいという気持ちなのだろう。

 PAS支持者からは、UMNOの発展主義の反発やUMNO政治家による汚職いう批判があるのはもちろんだ。でも PASが政権を握ったら、外国投資家は二の足を踏み、もっと経済は落ち込み、遅れていくのは目に見える。PASのマレー民衆だってそれを知っている。
 クランタン州では94%がマレーで、クランタニーズは職を求めて、シンガポールやサウジアラビア、さもなければKLへ(でもそろそろ今の若者達は、自分の街で働きたいと願い始めているらしいが)一時移住をする。州内に職がないからだ。それでも自分達のコミュニティーが、貧しくてもやっていければ、それでいいとさえ思っているし、自州が貧しかったら、ちょっと稼ぎに他州や他国へ出て行って戻ってくればいいと思っている。そして投票日には、ちゃんと自分の州に帰って投票に臨む。
 よそ者からはなかなか垣間見ることが困難なPAS支持者の心理。これから新世代に交代されても、変わらないのだろうか。
 

本稿は日馬プレス第273号(2004年5月1日)に掲載されたものです。