サラワクの原住民

 サラワクのほとんどの原住民は、大地、ジャングル、水、空といった自然と密接に関わって生活してきたため、そのタブー(自然への畏敬の念をあらわす)や様々な祭事、儀式などを数え上げていったら、膨大なリストになるだろう。

 ダヤッとオラン・ウルは主にキリスト教徒だが、いくつかの地域では、古くからある伝統的な宗教が今も残っている。精霊、神々、祖先、輪廻はダヤッとオラン・ウルにとっては特別のものなんだ。

 それでは、主なものを紹介してみよう。地図を見れば、それぞれの分布がわかるようになっている。


1.ダヤッ(Dayak)

●イバン (Iban)
 サラワクで最も人口の多い原住部族で、人口の30%を占める。ボルネオで最も恐るべきヘッドハンターとして名高いイバンだが、今日では寛大で、友好的で、穏やかな人々だ。もともと海賊、または漁師だった歴史から、彼らは通常「海のダヤッ (Sea Dayaks)」と呼ばれる。カリマンタン(サラワクの南に位置する、ボルネオのインドネシア領)から移住して来たイバンの開拓者たちは、バタン・アイ川 (Batang Ai)、サリバス (Saribas) のスクラン川 (Skrang)、ラジャン川 (Rajang)の川沿いに住みついた。多くの家族が住めるよう、多数の部屋からなる「ロング・ハウス」に暮らす。有名なのは、イバン戦士にとって勇気の象徴だったパンタッ (pantak〜タトゥー)、Pua Kumbu (イバンの伝統織物)、木製工芸、ビーズ細工、そして、お米から作られる甘いお酒、トゥアッ (tuak)で有名。トゥアッ はお祝いやお祭りで振る舞われる。例えば、Gawai Dayak (ガワイ・ダヤッ〜収穫祭/6月1日)、Gawai Kenyalang (ガワイ・クニャラン〜サイチョウのお祭り)、Gawai Antu (ガワイ・アントゥ〜祖先の霊のお祭り)。


●ビダユッ (Bidayuh)
 西カリマンタンに起源をもつ彼らの多くは、今、バウ (Bau)やサリアン (Serian)といった丘陵地域に暮らしている。クチンから車で1時間以内のところだ。他の部族がサラワクに移住し、定住するにつれ、おとなしい性質のビダユッは、はるか内陸へと退き「陸のダヤッ (Land Dayak)」と呼ばれるようになった。彼らの伝統的住居はバルッ (baruk)と呼ばれ、高さ1.5mほどの円形筒形をしている。ビダユッのトゥアッも有名で、彼らはトゥアッづくりの達人だ。


2.マラナウ (Melanau)

 サラワク原住部族のひとつと考えられている。発祥の地はムカッ (Mukah)で、もともと3〜4mの高床式の家に暮らしていたが、現在では、マレーの生活様式に適応し、カンポン式の住居に住んでいる。伝統的に漁業を営み、今でも最高のボート職人、工芸職人と評される。伝統的には、精霊信仰で、現在でも毎年カウル・フェスティバル (Kaul Festival)を祝うが、今日、マラナウの多くはイスラム教徒かキリスト教徒である。 


3.オラン・ウル (Orang Ulu)

 「オラン・ウル」は「(川の)上流の人々」という意味。つまり、オラン・ウルはサラワクの広大な内陸地帯、川の上流域に暮らす多数の部族の総称だ。その主な部族はカヤン (Kayan)、カニャッ (Kenyah)、少数部族にはカジャン (Kajang)、クジャマン (Kejaman)、プナン (Punan)、ウキッ (Ukit)、ペナン (Penan)、ルン・バワン (Lun Bawang)、ルン・ダエッ (Lun Dayeh)、ムルッ (Murut)、ベラワン (Berawan)、クラビッ (Kelabit)、ビサヤッ (Bisayah)、クダヤン (Kedayan)が含まれる。


●カヤン (Kayan)
 サラワクには約15,000人のカヤンが暮らす。サラワクの北内陸部、バラム (Baram) 川中流域、ラジャン川上流域、トゥバウ (Tubau) 川下流域にロング・ハウスを構える。イバンと同じく、ヘッドハンターだった。熱帯広葉樹のもっとも堅い木であるbelianの固まりを彫ってボートを作る技術は有名。女性は、重たい真ちゅうのイヤリングをつけ、耳たぶは肩までの長さに達する。


●クニャッ (Kenyah)
 クニャッの起源についてはいくつかの説があるが、発祥の地として知られているのは、バラム・リバー(Baram River) 沿いのロン・サン(Long San)。彼らの文化はカヤンのそれと良く似ている。典型的なクニャッの村はたったひとつのロングハウスからなっていて、ジャングルを焼きはらって稲作を営んでいる。


●ペナン (Penan)
 世界最後の狩猟部族のひとつ、そして、サラワクで唯一の否定住民族。1ケ所に居を定めず、果てしなく広がるサラワクのジャングルの奥深く、熱帯雨林の木々の下に簡易な住居を作っり、1ヶ月ほど暮らしては移動する。彼らは現在でも吹き矢を使って野生の猪や鹿を狩り、ジャングルを転々とする生活を続けている。都会から遠く離れて暮らしているが、カヤンやクニャッとだけは、物々交換のため頻繁に交流している。編み物の名人で、質の高い藤のバスケットやマットをつくる。ブンガン(Bungan)と呼ばれる神を崇拝している。


●クラビッ (Kelabit)
 人口約3000。小さな空港もあり、飛行機以外の交通手段ではなかなか難しい、海抜1200以上の高原の辺境バリオ (Bario)に暮らす。旧式の、伝統的な農業を営む。稲作が有名だが、その他、高原の涼しい気候に適した作物を栽培する。


 次回は、サラワクを違った角度で紹介しよう。じゃ、また。