サラワク熱帯雨林の調べ

 今回はサペという楽器について話そうと思う。

 オラン・ウル(カヤン族やケニャ族)の民俗楽器であるサペは、近年世界中で注目されるようになり、特にワールドミュージック・シーンによって商業化が目立っている。ケニャ族のアニィット・セロンという人が最初にこのサペを紹介したんだ。面白い話かな。

 稲作や刺青のデザインなどオラン・ウルやダヤック族の様々な文化は、何世代にわたって継承され続けている。これらの文化は、彼等の日常の必要性からだけではなく、インスピレーションの源としての意味を持っていたんだ。彼等がいかに自然を愛でて、ともに暮らしてているかがわかる。サペは、もともと儀式において夢の世界と人間とのコミュニケーションやトランス状態を作るために用いられてきたものなのだ。

 ところでサペとはどんなものかを話していこう。サペは伝統的な弦楽器で2本から4本の弦を持ち、小さなネックが特徴的だ。(写真A)サペのボディーは、メランティ、アラウ、ジェルトン、カポールといった比較的やわらかい木材をくり抜いて作られる。一つの木材から作られるのも特徴だ。正面から見るとボトル形で、側面から見るとボートのような形をしている。ネックのフレットは、チューニングするときに動かすことができる。大概のサペのボディーとヘッドの部分には、オラン・ウル伝統の模様が彫られている。

 また、サペは大別して2つのサイズのものがある。小さいものは、サペ・バリと呼ばれ、全長60cmぐらいで2弦のものだ。弦は「イジョッ」と呼ばれる特別なものだ。(ボクには確信がないが、おそらくねじった籐かサゴの繊維からできているのだろう。でも儀式の意味があるということは確かなようだ)


 大きなサイズのものは、サペ・カンジェットと呼ばれ、全長150cmぐらい。ナイロンまたは鉄製の弦が3本または4本ある。カンジェットとは、カヤン族の言葉で「踊り」を意味する。サペ・カンジェットは、その名の通り、踊りなどの伴奏に使われる。ここ数年サペの認知度が上がっていくにつれ、エレクトリック・ギターのようにピックアップとアンプがついたものも登場している。サラワク人ミュージシャンの手によって作られたこういった小さなサペは、「サペレレ」と命名された。ウクレレのサペ版ってところだ。もっと興味がある人は、ウェブサイト(www.geocities.com/sapeborneo)を参照して欲しいな。

 サペは音楽的に非常にシンプルな楽器だ。3弦のサペでは、最初の弦でメロディーを奏で、他の2本の弦は親指でリズミカルに弾いて低音を出すんだ。サペの演奏は、基本的にド、レ、ミ、ソ、ラからなるペンタトニック・スケール(5音階)を使う。サペの音を知る一番良い方法は、ランディー・ライン―レウシュ(Randy Raine - Reusch)によって録音されたツサウ・パダン―サペ・レジェンド(Tusau Padan - Sape Legend 1930-1996 )による『マスター・オブ・サラワキアン・サペ(Master of the Sarawakian Sape)』、『サラワク(Sawaku)』、またはサラワク文化村によって制作された『トゥク・カメ―熱帯雨林のリズム(Tuku Kame - Rhythms of the Rainforest)』などのCDを聴いてもらうことだ。また、ウェブサイト(www.asza.comwww.sarawakculturalvillage.com)などでも知ることができる。
 


 サペによる音楽の多くは、夢からインスピレーションを得ている。ボクも個人的には、サペの音はリラックスさせてくれるし、安らいだ気持ちに引き込んでくれるので眠りに落ちる前に聴くのが好きだ。いい夢が見られるからね。

 サペは、アンジュン・ウタン(木製の管楽器)やゴングやグンダン(打楽器)といった楽器と一緒に演奏される。そして装飾を施した衣装の踊り子が踊る特別な場で演奏される。(写真B、C)オラン・ウルの踊りには数種類あり、ボクのホームタウンを訪れてくれたら祝いの踊りである「ウヤット・ウド・ダンス」などが見ることができるだろう。また「レレン・ロン・ダンス」は戦士や訪問者を迎える踊りだ。「ンゲレプット・ダンス」は、毎年6月1日に行われるガワイ・ダヤック・フェスティバルの式典で見ることができるだろう。

 最後に、ボクがいろいろここまで紹介してきたことは、このことを言いたかったからなんだ。ツサウ・パダンは、サペ奏者のジミ・ヘンドリックスだ!

 次回もサラワクの楽器や音楽について紹介していけたらと思う。7月9〜11日に行われる『レインフォーレスト・ワールド・ミュージック・フェスティバル』を忘れないでね。では!

<写真提供>
Nadim Bokhari