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「トンカット・アリ」のスチームボートで健康になろう


え? あの『トンカット・アリ』ですか?

 ある日のこと、仲良しのS氏が「ちょっと面白いところを見つけたんですよ!」と、何やらアヤシイ笑いを浮かべて話しかけてきました。なんでも、イポーでスチームボートのうまいところがあるというのです。「それがね、スープにトンカット・アリを使っていて、今や地元で大人気なんですよ。うひひひ。」なんだかとても嬉しそうです。実際に食べてみて、非常に美味だったというだけで、多くを語らないS氏。「トンカット・アリ」といえばマレーシアが世界に誇る強精剤です。それとスチームボートとの組み合わせとは一体どんなものなのか。早速行ってみることにしました。
 イポーで高速をおりて車で約20分。メダン・ゴペンにある「霹靂巴迪藝術餐館」が目指すレストラン。なにやらすごい名前ですが、「霹靂」はペラ、「巴迪」はバティックの意味ですね。実際、レストランだけでなく、バティックのギャラリーも併設されています。
 出迎えてくれたのはオーナーのアズマンさん。「いやあ、はるばるKLからよく来てくれたね〜!」大きな声で話す、とても気さくで陽気なおじさんです。ペラのバティックを扱って13年、もともとはバティックの売店と小さなカフェだけだったのだそうです。「いやあ、やっぱり健康って大切だからね。それで1年半前にハーブを使ったスチームボートを始めたんだよ。」種類はマレー・コンセプトの「トンカット・アリ」とチャイニーズ・コンセプトの「ジンセン(高麗人参)」の2種類、どちらも苦みがあるので、味をととのえるのに非常に苦労したそうです。チャイニーズの奥さんと苦心惨憺、「トンカット・アリ」は1年、「ジンセン」は何と3年もの月日をかけたといいます。「トンカット・アリ」はマレーの伝統ハーブを中心に9種類、「ジンセン」はクコやナツメなど中国のものを中心に7種類のハーブが入っているとのこと。「ま、細かいことはいいからさ、とにかく食べてみてよ。びっくりするから。」という訳で、今回は「トンカット・アリ」を試してみました。
 
驚きの味

 鍋のふたをあげると、ぱあっと湯気が上がります。特に癖のあるにおいはなく、一見普通のスチームボートと変わりません。フィッシュボールや野菜といった、おなじみのネタを入れて待つことしばし。いよいよ味見の瞬間です。
「むむ! 苦みがなくてコクがあるっ!」
気分は「美味しんぼ」の主人公、とでも申しましょうか。ある程度の苦みを想像していましたが、むしろほのかな甘味すら感じさせるほど。非常に美味しく「これがトンカット・アリか?」と、驚きの味なのです。アズマンさんは「どう? 美味しいでしょ?」と言わんばかりの微笑みを浮かべています。彼によれば、この甘味の秘密はスープのベースに使用されているニンジンだとのこと。自然の味を大切にするため、化学調味料は一切使用しません。添えられたチリ・ソースがホーム・メードであることも、おいしさを追求する強い姿勢のあらわれでしょうか。
 「最後にネ、ビーフンを入れて食べると最高なんだよネ」と言われるままに試してみると、これが本当に言葉通り。ビーフンを口に入れると、濃厚な出汁の味と豊かな香りが広がります。この香りを大切にしたいため、ステンレスではなく土鍋を使用している、というのも納得です。

 夢中になって食べ終わり、気がついてみると、身体がほかほかと暖まっています。それも、普通に熱いものを食べたときの暖まり方とはちょっと違い、「身体の芯から」という感じなのです。「身体の毒素を排出する働きがあるから、汗をいっぱいかくよ」とアズマンさん。また、血行を良くする働きもあるとか。効果の確かな15年から20年もののトンカット・アリしか使用していないということですが、じゃあその効果とは何でしょう?「トンカット・アリ」そのものについて、ちょっと調べてみました。
「トンカット・アリ」蘊蓄あれこれ
 ビルマ、タイ、スマトラ、ボルネオ、フィリピンなどの熱帯雨林に広く分布する低木「トンカット・アリ」、学名はユーリコマ・ロンギフォリア(Eurycoma Longifolia)、和名はナガエカサ。インドネシアでは「Pasak Bumi」、ベトナムでは「Cay Ba Binh」と呼ばれています。このベトナムでの呼称は「Cay=治す」「Ba=百」「Binh=病気」、つまり100もの病を治す力がある植物、という意味があります。
 マレー語での「Tongkat Ali」とは、「アリの杖」という意味です。これは、200年ほど前、とある村の年老いた医者が、村人の治療に使う生薬の根をいつも杖がわりにしていたことが由来と言われています。4人の奥さんと28人の子供、それに70人以上の孫がいて、なんでも最後の子供を授かったのが90歳の時だというのですから、すごいものです。
 効能としては、男性の精力強壮や生殖機能の改善、疲労回復、解熱、マラリアの予防などがあるとされ、東南アジアで万能薬、滋養強壮薬として日常的に活用されてきました。
 強壮効果があるのは、トンカット・アリの苦味成分の一種「カッシノイド」というテルペン配糖体だ、といわれています。このカッシノイド類(ユーリコマノン・ユーリコマノール・ユーリコマラクトンなど)には、胆汁の分泌を促して胃腸の働きを活発化、体調を整える働きがあります。
 さらに、UKM(国立マレーシア大学)の研究報告によると、男性性器の勃起のメカニズムに関わる、ある特定の酵素(PDE)に働きかけ、局所的な充血を強化する働きがあります。マラヤ大学の研究により、テストステロン(男性ホルモン)値の上昇および精子量の増加といったデータも確認されています。
 また、東京薬科大学薬学部の竹谷孝一教授によると、トンカット・アリには人間の体が本来持っている自然治癒力を高める働きがあります。服用し続けることで衰えていた自然治癒力が向上し、結果として体の様々な機能が活発になります。
 今回はペナンからの帰路にイポーに立ち寄ったのですが、いつもだと長距離ドライブの後でどっと疲れがでるのですが、それほどひどい疲れ方をしませんでした。いろいろ調べた中で、「毒素の排出」という記述には見あたりませんでしたが、なんと翌朝の便通の量がすこぶる多かったのです。おそらく「体の様々な機能が活発」になった結果なのでしょう。
 え? 夜? 何のことですか? あるオネエチャンと旅行に行っただなんて、誰も言ってないじゃないですか。むはははは。
「ナツメグ・ジュース」も忘れちゃならぬ
 そういえば、アズマンさんの強いお勧めがもう一つありました。「ナツメグ・ジュース」です。ナツメグといえば、肉料理なんかのときに使われるスパイスですが、ペナンの辺りでは、コピティアムで普通に飲める気軽なドリンクなのです。実際、私もペナンに行けば必ず飲むお気に入りです。色は薄い茶色で、ちょっとコカコーラのような香りがあります。
 ここで供されるのも、やはりアズマンさんのところで作っているもの。ペナンでは土産物店やスーパーなどで濃縮タイプが買えますが、アズマンさんのレストランでもボトル入りのものが販売されています。
 ナツメグは1世紀ごろから使われはじめ、宋代に中国に渡りました。消化不良、食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛などに効く漢方薬としても利用されてきました。日本には嘉永元年、長崎に苗木として輸入されたのが最初とされています。
 何はともあれ、甘酸っぱい味と香りがスチームボートにぴったりの飲み物です。
「健康はお金じゃ買えないからネ」
 取材の時に何回もアズマンさんが強調していたのは、健康のこと。トンカット・アリにしても、ジンセンにしても、ナツメグにしても、みんなに美味しく食べてもらって、健康になって欲しいという彼の強い願いが込められています。健康に良く、しかも美味しい。だから地元でも人気の店で、毎週通ってくるお客さんもいるといいます。最近では香港からフランチャイズの話もあるとか。「健康はお金じゃ買えないからネ」と言って微笑むアズマンさん。次回はジンセン・スチームボートを食べに来ますよ!

「霹靂巴迪藝術餐館」(SYAZANAZ D'ART OF PARADISE CAFE)
Lot 2.02, Bangunan Silveritage Galleria,
Medan Gopeng, Jalan Gopeng,
31350 Ipoh, Perak Darul Ridzuan
Tel: 05-312 9418, 05-313 9846
Fax: 05-311 1528
E-mail: syazanaz@streamyx.com



<本稿は日馬プレス第266号(2004年1月16日)に掲載されたものです。>


 

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