マレーシアでもっとも人気のある避暑地のキャメロン・ハイランドはこの国で生活する日本人にとっては食卓を彩る「おいしい高原野菜の産地」のイメージが強い。松本清張の「熱い絹」という小説を読んだことのある人は、この地で失踪したタイのシルク王、ジム・トンプソンに思いを馳せるに違いない。また、昆虫好きの皆さんにはラジャ・ブルックなどの野生の蝶の宝庫としてあこがれの地だ。
ここ数年、日本でテレビ番組に紹介されるなどで、キャメロン・ハイランドが注目を浴びている。その高原リゾートに日本で現役を引退した中高齢の皆さんが何百人も長期滞在している。いわゆるロングスティをたのしむ人達だ。ゴルフをたのしみ、親しい仲間と囲碁を打ったり、将棋を指したりしている。地元の人達に日本語を教えている人もいれば、盆踊りを企画したりしているともきいた。高原の中心街“タナ・ラタ”には日本語のメニューがあるレストランもあれば、日本の食材を売っているミニ・マーケットもある。
タナラタの町の周辺を歩けば、あちこちで日本人のおじさんおばさんたちの姿を見かける。とくに日本の冬、12月から2、3月にかけてと、夏の7、8月ごろに1ケ月、2ケ月と滞在しているらしい。
マレーシアの都会で仕事をしているわたしたちは、「キャメロン・ハイランドは涼しくていいんだけれど、2、3泊すれば飽きてしまうよな」と感じてしまう。「退屈しないのかな?」という素朴な疑問を、数ケ月前にロングスティをしている人にぶつけてみたことがある。「やることがいっぱいあって、退屈することなんかありません」という。
おかげで、キャメロン・ハイランドではどこに行っても片言の日本語とでっくわしてしまう。『日馬プレス』を通して「片言の日本語で話しかけてくるマレーシア人には気をつけよう。この国の政治家や高級官僚と親しいという自称コンサルタントの日本人には気をつけよう」と警告しているわたしとしては、気恥ずかしいような気持ちになってしまう。ようするに気をつけなければいけないのは、日本にいても、マレーシアにいても、話しかけてくる必然性がないのに、(自称ではいろいろ言いますが)どこのだれかわからない人が話しかけてきたら、なにか魂胆があると感じて警戒してほしいということだ。でも、キャメロン・ハイランドではホテルやレストランの皆さんが、日本人のお客様に気さくな雰囲気でたのしんでもらおうというサービス精神から発せられる日本語だから、たぶん問題はないだろう。
キャメロン・ハイランドと日本人との関わりは、昭和初期に移民促進を働きかけていた南洋協会の『南洋協会雑誌』1930年8月号で「新たに発見された馬来の沃野キャメロン高原。(中略)土は肥え気候は温暖。邦人小企業者に好適すと云ふ」などと紹介されたのが発端だ。支那人(華僑)たち野菜農園主に混じって、入植者第一号は竹内泰平という長野県からの移住者だった。最盛期には20にも及ぶ日本人経営の農園があったという。トマト、セロリ、花椰菜(カリフラワー)といった西洋野菜が栽培されていた。とくにトマトの栽培は日本人の独壇場だった。
太平洋戦争に敗れ、日本人の農園主たちは去った。農園主たちが一心不乱に働き、断腸の思いで去ったその地に、半世紀あまりをへた現在、当時生まれたばかりの日本人が数百人第二の人生をたのしんでいる。せめて、この地で日本人が野菜作りをしていたことを知っていてほしい。
快適ドライブの新ルート開通で、元気いっぱい
キャメロン・ハイランドの中心街タナラタに行くには、南北(PLUS)ハイウェイをタパ(Tapah)ででて、曲がりくねったスネークロードを約60km、約2時間かけてのぼる道しかなかった。この道は豪雨が降ると崖が崩壊してしばしば通行止になる。キャメロン・ハイランドは一本道しかない、別荘をでれば、いやでも衆人環視の街を通らなければならない。つまり、密室と同じで誘拐や失踪は困難ということから、ジム・トンプソンの失踪の謎を深いものにした。
「もう一本、道ができたら」というのは、キャメロン・ハイランドの住民たち、観光産業に従事する人たちにとって悲願だった。もちろん、高原野菜農家の出荷も容易になる。事故や病気で救急医療が必要なときにも、民間医療機関のあるイポーが近くなって心配が減る。その道が通じた。イポーより10km近くクアラルンプールよりのシンパン・プライ)Simpang
Pulaiから約1時間15分でタナラタにつく。山間を切り崩し、広くて景観のいい道路がブルーヴァレー(Blue
Valley)へとつづく。広大なT字路を右折して川沿いに小さな街を幾つか越えて約30分の行程だ。
時間的には30分から1時間近く短縮されたが、それよりもスネークロードがゆったりして運転がらくになったのがいい。とはいうものの、日本ではトンネルにするだろう山間部が切り通しになっている。便利で安全になったけれど、動植物にとっては迷惑なことだろうなと思う。豊かな自然があるからこの国はすばらしい。自然を生かし、自然とともに生きているからこの国の人たちは生き生きしている。それだけに、できることなら生態系を必要上に壊さないでほしいというのは外国人のたわ言なんだけど。
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そして、この道路の開通で最高の恩恵をうけたのが『ホテル・エクアトリアル・キャメロンハイランド』だ。以前は、タナラタの先の中級ホテルや中華レストランのあるブリンチャンから、さらに向こうというので敬遠され気味だった『ホテル・エクアトリアル』が標高1.628mに位置する文字通り最高のロケーションになった。ホテルと長期滞在用のアパートメントが立ち並び、その入り口付近には近郊の農園から採れたばかりの野菜や切り花が所狭しと並んで、活気あふれる地域になっている。ホテルのホスピタリティーは「さすが、エクアトリアル」という感じがする。
『ホテル・エクアトリアル』からは、お馴染みのボーティー(Boh
Tea)の広大なプランテーションに近いし、バタフライ・ファーム、蜂蜜ファーム、ランやバラの観光ファームは徒歩の距離にある。夜、車で5分ほど下ったブリンチャンに行けば、セーターやジャンパーを着た地元の人々にまじってキャメロン・ハイランド名物のスチームボートが食べられる。 |
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10年位前においしそうなレストランを探しながら歩いていたら片言の日本語で「日本の方ですか?」と声を掛けられたのが縁のはじまりだった。大家族を一人で支えているような働き者の若い店主のキャリー・フーさんは店にきた日本人客から教わっただけだという日本語をていねいにしゃべる。キビキビした動きは見ていて気持ちがいい。夫婦そろってよく動く。
クアラルンプールのどまん中でオープンエアーのスチームボートもいいけれど、涼しい高原で湯気の温もりを感じながらたべるスチームボートは最高だ。鳥ガラとトムヤムの2種類のスープに採れ立て野菜をたっぷり、エビ、イカ、鶏肉、牛肉、魚の細切れ、つみれ等々をいれてたべる。仕上げは出汁のきいたスープにビーフンと玉子をいれてかき混ぜて食べる。これがまたうまい。
抻記海鮮飯店(Kwan Kee Restaurant)
No.8, Jalan Besar, Brinchang 39100
Cameron Highlands, Pahang
Tel:05-491 4078 |

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参考資料:アジア経済研究所刊 原不二夫著『英領マラヤの日本人』
*キャメロンハイランドへの新しい道
PLUS HighwayをSimpang Pulai
Tollをでる。でてすぐのT字路を右折、約300m先の信号のある十字路(左前方角に警察署)を右に。あとは道なりに1時間近く走る。Blue
ValleyのT字路(直進するとGua Musang)を右にBrinchang、Tana Rata方向に行く。
取材協力:
Equatorial Cameron Highlands
Kea Farm, Brinchang, 39100
Cameron Highlands, Pahang
Tel:05-496 1777
Fax:05-496 1333
www.equatorial.com
info@cam.equatorial.com
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