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イタリア対フランスとなったW杯決勝でフランスのMFジェネディーヌ・ジダンが試合終了間際にイタリアのDFマルコ・マテラッツィに頭突きを喰らわせた。主審はジダンにレッドカードを突きつけ、即刻退場とした。流れをつかみかかっていたフランスはピッチ上の選手が一人減ったことによって勢いを失い。PK戦で敗れた。
このW杯で引退を表明していたジダンは引退の瞬間をピッチ上で迎えることができなかった。そして、フランスの監督はジダンの行為ですべてが終わったと非難した。
経過はこういうことらしい。試合中にマテラッツィがジダンのユニフォームをつかんだ。ディフェンスの選手が決定的な場面を作りかかっている相手選手のユニフォームを引っぱるのは「相手を抑えた」ということで反則だ。しかし、試合の流れを重視する審判はこの反則はよほどひどくない限りとらないことが多い。だからだろう、執拗にユニフォームを引っぱられたジダンが「そんなに(自分の)ユニフォームが欲しかったら、試合後にやるよ」と言ったらしい。それに腹を立てたマテラッツィが何かを言った。
「マテラッツィは僕の母と姉を侮辱した。立ち去ろうとすると3回も同じことを言った」というのが、ジダンの弁明だ。暴力をふるったことについては申し訳ないと思っている。けれど、自分の行為を否定はしない」と言っている。確かに、(試合中に)乱暴な行為をした場合は退場という規則がある。テレビ画面などで世界中の十数億人の人が見ているW杯決勝戦で、サッカーをこのむ子供たちのあこがれの選手であり、人気者が乱暴な行為をした。退場は当然だ。だからと言って、それでお終いというのはおかしい。
マテラッツィは「ぼくは(メディアが伝えているような)”卑怯なテロリスト”とも、売春婦とも言っていない」と、イスラム教国のアルジェリア系移民で貧民街で育ったジダンを傷つけるような発言はしていないと否定した。ただし、「侮辱的な言葉をかけたことは認める」とも言っている。「侮辱はしたけれど、人種差別や宗教や政治がらみのことはいっさい言っていない」という。だったら、どういう言葉で侮辱したのかを知りたい。でもそれには答えていない。人種差別、宗教、、政治的、家族、それ以外に、ジダンを侮辱する言葉があったら知りたい。いずれにせよ、第三者的にはマテラッツィの弁明は事実を知ろうとする人たちには、「言った」、「言わない」の隘路に引き込もうとする嘘としか感じられない。
英紙タイムズは、読唇術の専門家にビデオを分析してもらったところ、「マテラッツィがジダンに向かってイタリア語で「テロリスト。売春婦の息子」と呼んだ上で「くたばれ」と言ったという。イタリア紙レプブリカには「お前の姉をよこせ」と言ったと書かれている。イタリアでもマテラッツィが強烈侮辱的発言をしたことが明らかになっている。
「売春婦の息子」というのは、イタリアでは相手を侮辱するときに日常的に使われているようだ。マレーシアなど旧英連邦の人々が、「ファックユー」と叫びながら、中指を立てて侮辱するのと同じらしい。欧米の人たちは(最近はアジアでもまねをする人がいるけれど)相手を侮辱するのに、性的な行為を表現することが多いようだ。近親相姦的な意味の言葉を使うことも多い。もちろん、こういう言葉で相手を侮辱するのは、一般にインテリジェンスの低い層に多いようだ。
しかし、国際サッカー連盟(FIFA)が複数の読唇術の専門家を呼んで、ビデオからマテラッツィが何を言ったかを解明する可能性は薄い。近年問題が顕在化して頭を痛めているイスラム諸国の人々への人種差別的言動や、「テロリスト」と指差すような行為が、W杯で行われていたとは、FIFAは認めたくはないだろう。FIFAのブラッター会長はジダンのW杯MVP剥奪で幕を引きたかったのだろう。
「だからやった」というのが、朝日新聞の載っていた二宮清純氏の「確信犯ではないか」とコラムだ。ジダンは具体的な文言を口にしない。騒ぎが大きくなっていく、FIFAはマテラッツィを追求するしかなくなってしまった。サッカーの規則では「攻撃的、侮辱的、あるいは口汚い発言をした場合」は退場となる。もし、マテラッツィの発言内容が退場に値するものだったら、決勝戦は無効、再試合、といった議論になり、事態は最悪になる。
せっかくのジダンの問題提起だったが、ジダンの母のマリカさんが、英紙デイリー・ミラーに「彼(マテラッツィ)が言ったことが本当なら、あのイタリア人の急所を切り取ってやりたい」と言ったという記事が載った。ここまでくると、どっちもどっちもになってしまう。人種的侮辱と宗教的侮辱、そして肉親への性的侮辱をしたイタリアの選手と、退場になっても自己の信念を貫いたアルジェリア系移民二世の意地という、「下半身対上半身」といった圧倒的に多くの人がジダンを支持するはずの構図が崩れてしまう。「子の心、母には通じず」といったところか。
ただ、世界のサッカーファンの世論はジダンに傾いている。「悪いことは悪い、それは認める。でも、自分にはああすることしかできなかった」というジダンの姿勢は支持されやすい。もちろん、イスラム教徒、とくにヨーロッパのイスラム系の移民たちの支持は強力だ。最終的にはFIFAも世論に追随するしかないだろう。
ジダンの頭突きで大騒ぎをしている最中、日本の大相撲では、前頭三枚目の露鵬が千代大海に敗れた後、にらみ合い、最後の礼もしないで土俵を後にした。怒りの収まらない露鵬は風呂場のドアのガラスを殴りつけ、ガラスを壊し、自分も右手に裂傷を負った。その後、審判部に呼ばれて注意を受けた。その直後、審判部室前でフラッシュを焚いて写真を撮った新聞社のカメラマンを殴りつけ、もう一人のカメラを壊した。
どうやら、土俵下に落ちた露鵬に、千代大海が何やら言ったらしい。千代大海の発言は「俺の口から言うことはできない」というような侮辱的な発言だったのだろう。露鵬の素行の悪さ、礼儀知らずは相撲界での有名。相手の千代大海だってほめられた力士ではない。どっちもどっち、でも、相撲の事件の方は国際的な国内問題。外国人力士全盛の昨今、あまりつよいことも言えないだろうな。
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