マレーシアの第12回総選挙で野党勢力が躍進したことに伴い、マレー系住民を優遇してきた「ブミプトラ政策」をめぐり混乱が広がっている。
8日に行われた選挙のうち、下院選では与党連合が3分の2の安定多数を割り込んだ。12州の州議会選でも与党連合は振るわず、5州で野党勢力が過半数を獲得した。
このうち工業地域のペナン州では華人系野党、民主行動党(DAP)が第一党となり、ほかの野党、人民正義党(PKR)、全マレーシア・イスラム党(PAS)と連立政権樹立で合意した。マレーシア全体の民族構成はマレー系66%、華人26%、インド系8%だが、ペナン州は華人46%、マレー系42%、インド系10%と、華人の比率が全国一高い州だった。
11日、ペナン州首相に就任したリム・グアンエンDAP幹事長が「縁故主義や汚職の温床である」として、ペナン州ではブミプトラ政策を採用しない方針を表明。これに対し、アブドゥラ首相が「ペナン州政府は民族間の緊張を高めるような雰囲気をつくり出してはならない。マレー系住民を疎外してはならない」と再考を求めた。ブミプトラ政策の全面的な撤廃は、新たな民族間対立を生む危険性があり、懸念する意見もつよい。段階的な変化が望まれている。ペナン州は中国系住民の割合が他の州に比べて高く、これまでも連立与党系の中国系政党が政権を担ってきた。DAPは野党とはいえ中国人政党だけに、マレー人社会では欲求不満が渦巻いている。それだけに、過度に変革を急ぐと、欲求不満が過飽和状態になってしまう。ブミプトラ政策は、多民族国家が平和裏に発展していくための緩衝材として必要不可欠なものだと思う。しかし、現在のように、一部の特権階級とその縁故者のみが恩恵にあずかる状態は好ましくはない。アブドゥラ首相の言うように、段階的な変化が望ましい。
一方、ペナン競馬場跡地の再開発事業(ペナン・グローバル・シティ・センター=PGCC)について、リム・グアンエン・ペナン州新首相は州当局がまだ事業認可をしていないと発表し、事業を推進するか見直すかはこれからの作業とした。ペナン州の華人系の団体は、DAPが主導する新政府が急激な経済政策の転換をしないようにもとめている。
PKRの顧問、アンワル元副首相は、野党勢力が政権を握った州では反ブミプトラの動きが強まるとの見通しを示すが、マレー系主体のPASはブミプトラ政策の撤廃には消極的で、アブドゥル・ハディ・アワン党首はマレー人貧困層に対する補助は福祉国家設立を目指すPASの政治目標に通じるものだとして、ブミプトラ政策の継続を支持する意向だ。しかし、ブミプトラ政策を根幹とする新経済政策の推進中におきた政治的権力者や高級官僚とのとの縁故主義による汚職、談合、非効率などの問題は徹底的に排除する方針という。
また、PASが州議会の第一党になり、クランタン州に次いで影響力をつよめたケダ州、ぺラ州ではイスラム刑法が導入されるのではといううわさが出ていることについて、アブドゥル・ハディ・アワン党首はまったくそういうことはないと否定している。さらに、これら3州においては、公明性を期するために公共事業では公開入札を導入する意向だという。
また、ケダ州クリムに開発予定の“クリム・ハイテク・パーク”についてPASのアジザン・アブドル・ラザク新主席大臣は、事業が継続すると表明し、工業団地への積極的な投資を呼びかけている。
野党勢力は一部開発事業を見直す方針を示しており、野党が勝った5州のうち、日系企業を含む外国企業が多数進出するペナン州、スランゴール州、ケダ州では懸念の声が上がっている。イスラム色の強いPASが制したケダ州には行楽地のランカウイ島があり、観光業への影響も取りざたされている。 |