運転席と助手席の間に頭がもうひとつ

 前を走行する車両を見ていると、運転席と助手席の間に頭がもうひとつ、つまり、頭が三つ並んでいることが多い。
 つまり、頭が三つの半数は、後部座席のひとがシートの真ん中に座って身を乗り出して、前の二人と話に夢中になっているのだ。残りは、幼児を真ん中に立たせているケースだ。かわいいわが子をそばに置いて、たのしく運転しているのだろう。
 マレーシアでは「なんでこんな場所で」と思えるようなところで追突事故が起こる。ノーブレーキで二重三重四重衝突なんて事故を毎日のように見る。要するに、話に夢中になりすぎて、前方を見るのを忘れてしまうからだ。それでなくとも、急ハンドルで予告なしで割り込みというのが多いのだから、危険きわまりない。真ん中に子供を立たせていて追突事故を起こしたら、最大の被害者は子供になる。
 「そばに置いて話がしたい」という気持ちも分かるけど、「子供の生命と安全を守るのが親の務め」なのだから、わたしたちは生命と安全を優先するのが常識だと思う。マレーシアの人々は民族を越えて「子供との触れ合い」を大切にする。親しい人々と話をするのも大切なコミニケーションだ。オフィスでも家庭でも、歩行中でも電話に夢中になっている人たちなのだから、口下手、自己表現下手の日本人とは価値観が違うのだろう。

 

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本稿は日馬プレス第255号(2003年8月1日)に掲載されたものです。/font>