道路の真ん中に故障の車

 マレーシアでは故障をして道路上で立ち往生している車をよく見かける。古い車とか、いかにも整備不良のバスや貨物車だけでなく、バリバリの新車の故障も多い。
 故障するのはある程度仕方ないのだけれど、故障して停まった場所で固まってしまうのが困る。フェデラル・ハイウェイの車線の真ん中に堂々と鎮座していたり、信号待ちの最前列で故障なんてのもある。ラッシュアワーの幹線道路でも車線の真ん中に停まったっきりというのも多い。
 日本では、いや日本人は車から下りて、車を押して道路の端に寄せたり、交通の流れの邪魔にならない場所に移動させる。交通量が多くても、車を押しているときにはクラクションを鳴らしたりはしない。余裕があれば手伝ってくれる。
 マレーシアでは、とにかく停止した場所を滅多なことでは動かない。なかなか修理人がこないときは、トランクを開き、葉っぱのついた枝を差しておいて、現場を去ってしまうひともいる。「ちょっと端に寄せれば渋滞は起きないのに」と思うのだが。
 マレーシアでは、故障でなくても車を目的地の入り口の前で停めて、家族や友人を乗降させていることが多い。「ちょっと左に寄れば、他の車は通れるのに」、「5メートル、10メートル先に行けば、普通に路肩に停めることができるのに」と思える場所で、道路の真ん中で停車する。階級社会の国だから、閣僚とか高級官僚、大富豪とか大企業の役員とかなら分かるけど、ごく普通のおじさんおばさん、ガキの類まで偉くなったような気分で乗降している。
 「ほかの車に迷惑だ」ということを考えないひとたちが多いからだろう。車社会が未成熟だと、「車の所有者になった」という意識が強く作用して、傲慢な態度になってしまうひとが増える。偉くなってしまえば、下々の者は文句を言わない。そんな感じなのかも知れない。

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本稿は日馬プレス第259号(2003年10月1日)に掲載されたものです。