「五月蠅」と書いて「うるさい」と読む。マレーシアのバイクは概ね傍若無人、法律もマナーも無関係に走っている。
交通先進国では自転車やバイクなどは道路の左側(右側の国もある)最側端を走行することが法律に書かれている。マレーシアでは100ccに満たないバイクがセンターライン寄りの車線の中央をゆったりと堂々と走っている。時速100km前後で走行する自動車と自動車の間の1mにも満たない空間を、軽業師のように100km以上のスピードで通り抜ける。しかも、二人乗りだったり、ときには三人乗りだったりするから驚異だ。
「彼等は勇気があるなあ。それに引き換え、わたしたちは臆病だなあ」としみじみ思う。『プロトン・ワジャ』という車の名称があるように、マレーの人々はワジャ(Waja)=勇気をもっている。男らしさを誇示するために、身だしなみも行動も男性的にする傾向が強い。
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日本人は事故を恐れる。自分の行為が招くだろう結果をあれこれ考えてしまう。事故を起こせば賠償責任が発生することもあるし、怪我をしたり死亡することもある。だから臆病になる。本能的に危ないことは避けようとする。
日本には暴走族という命知らずのグループがある。ただ、彼等は集団で暴走することで自らの安全を守っている。「集団」という鎧を被って「集団」の中でだけ行動することができる、社会的に一人前には見てもらえない精神的にひ弱な青少年たちだ。単独で暴走できるマレーシアのバイク族のたくましさのほうがずっとましだ。
彼等は自分の進行を邪魔する車の少ない車線を選ぶ。それが対向車線であってもおかまいなしだ。対向車線の車の方がセンターラインを越えて走ってくるバイクを避けてしまう。その数が多すぎるからだろう、警察も彼等の無謀運転には「見て見ぬふり」をするしかない。
一度、センターラインを越えて走ってきたバイク同士が正面衝突し、ひともバイクも宙に舞ったのを目撃したことがある。「自業自得だよ」。自動車族は「見て見ぬふり」をしてその脇を通り過ぎていった。
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