交通信号を倒すのはだれだ?

 クアラルンプールで2、3ケ月も生活したひとなら、朝、自宅から会社に向かう途中、いつも見慣れた交通信号が無残に破壊され、残骸になっているのを見たことがあるだろう。土台のコンクリートごと根こそぎ倒され、赤、黄、青の信号が砕け散っているのを見て、「だれが?」、「いつ?」と疑問に思ったひとも多いはずだ。  

深夜から早朝にかけて、居眠りドライバーや酩酊ドライバーが衝突した名残だ。当然、車のエンジンルームは目茶苦茶に壊れる。ドライバー自身も同乗者も無傷ではすまない。痛くても、苦しくても、交通警官が来る前に処理しないと信号の修理代から飲酒運転の罰金まで余計に払わなければならなくなる。それでなくても自分の車の修理代を考えると頭が痛いのだ。これ以上、財布に負担をかけないために、修理業者を呼び、事故車を消し去る。  

 
事故現場の横を通りすぎる車は当然「見て見ぬふり」だ。警察に通報したり、怪我人の心配をしたりして、つまらないことに巻き込まれるのは避けたい。うっかり警察に通報したり、目撃証言をすると、なぜか通報者や目撃者の氏名や住所が事故を起こしたひとに伝わったりするのだ。リヴェンジ、つまり逆恨みされ復讐に遭う可能性があるからだ。
  また、雨の日などに、道路照明の柱に激突して倒してしまう車がある。中央分離帯に乗り上げて亀の子になっている車もある。どっちに行こうか迷ったまま突っ込んでしまったのだろうが、本線と分流車線を分ける分離帯に乗り上げて亀の子になった車もある。事故車が真新しいベンツだったりBMWだったりすると気持ちが和むのは、貧乏人のひがみなのだろうか。

目次へ戻る


本稿は日馬プレス第265号(2004年1月1日)に掲載されたものです。