マレーシアだけの交通規則

 ゲンティン・ハイランドに招待されて、自分で車を運転していったとき、ゲンティンへの分岐の手前、制限速度時速90kmの区間で呼び止められた。このときも、いつも通りに何の違反もしていなかった。「スピード違反だ」と言われた。「スピード違反はしていない。わたしは時速80kmで走っていた」と自信をもって答えた。すると、「いや、追い越し違反だ。お前は二番目の車線を走っている車を、内側から追い抜いた」と言い出した。「あの車は80km以下で走っていた。たまたま内側の車線を走っていたわたしのほうが早かったので抜いただけだ」と答えた。そうしたら、「それが違反だ」と言われた。「日本でもアメリカでもオーストラリアでも、そんな規則は聞いたことがない」と言うと、「ここはマレーシアだ。マレーシアの法律では内側から追い抜くのは違反だ」と言い張った。わたしは「片側3車線の道で、車線どおりに走って違反だなんて信じられない」と言った。
 
 そうしたら、「カジノに行くのか」と言われた。「いや。ゲンティンに招待されて行くんだ」というと、「そうか。行け」と言われた。

 クアラルンプールに戻って、警察関係者に聞いたら大笑いをされた。「そんな規則はどこにもない」で終りだった。オーストラリアの運転免許証をもっていたことがあるわたしには、同じ英国の統治下にあった国なのだから、交通の基本的な規則は同じだと信じていた。それなのに、「マレーシアの法律では違反だ」と言われたときには正直言ってどうしていいか分らなかった。あれは何だったんだろう。あの警官は、何であんなことを言ったんだろう。テレ隠しだったのかなあ。

 でも、あのあたりは多くの上り下りがあって、左右に大きく曲がっている道路で、しかもスピードがだしやすい。とくにゲンティンから下ってくる車は危険だ。ちょっとした事故が、大事故になる区間だ。そこで警官が見張っている。それだけで事故は確実に減る。彼等警官がいるおかげで、わたしたちは安全に走行できる。ありがたいことだと思いませんか。

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本稿は日馬プレス第272号(2004年4月16日)に掲載されたものです。