前の車にピッタリ。車間距離をとらないのは

 マレーシアの車は車間距離をとらない。1m以内にくっついて走っている車もいる。高速道路でも2、3mしかとらないで走っている。雨が降っても同じだ。もちろん、集中豪雨のときはちょっと離れてくれるけど。

 日本では教習所で「制動距離」が何mだから「車間距離」は何m以上とるようにと勉強する。わたしたちも必要以上に前の車に接近はしない。急ブレーキをかけられたらかわせないからだ。追突すれば、とりあえず前の車と自分の車が壊れる。ひどいときは自分の車のエンジンルームに大きなダメージを受ける。おまけに、前の車の乗っている人がむち打ち症になる。損害賠償がたいへんだし、罰金や行政処分もたいへんだ。

 
 マレーシアでは2台の車両の修理代だけですむ。むち打ち症で「頸部が痛い」といっても通用しないから、やった方はらくだが、やられた方はつらい。

 だが、マレーシアでは加害車両1台、被害車両1台という事故は少ない。圧倒的に玉突き衝突が多い。事故原因がだれか?よく分からなくなってしまう。だから、話し合いが終わるまで、事故車の列が道路を占拠して、道路を大渋滞させてしまう。

 「車間距離をあけると割り込まれるから」というのが、マレーシアの人々の答えだ。割り込まれても、事故を起こすよりいいと思うのだが、やはり“面子”を重んずるこの国の人たちには、自分が割り込みをするのはいいけれど、他人に割り込みをされるのはいやなのだろう。

 車間距離なしで走っていても、マレーシアの人々は話し好きだ。家族同士、恋人同士、友人同士、話しに夢中になる。気がついたときは、ドスーン!ガチャン!だ。日本人も欧米人も大事な家族や恋人を同乗させているときには、運転はいつも以上に慎重になる。たぶん、車間距離なしで、高速で、割り込み割り込み走るのがうまい運転だと信じている人が多いマレーシアでは、同乗しているたいせつな人たちに、自分がいかに運転がうまいかを見てもらいたいのだろう。

 そして、「そこのけ。そこのけ」と前を走っている車をどかすために恐怖を与えようと、車間距離なしで煽ることもさかんだ。高級車ベンツ、路線バス、スクールバス、ローリーとそれでなくても危ない運転をする車がそれをやる。もちろん、カンチルだって、プロトン・ワジャだって負けてはいない。

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本稿は日馬プレス第278号(2004年7月16日)に掲載されたものです。