交通信号の長期休暇

 マレーシアの交通信号は故障が多い。交通量の多い交差点でも少ない交差点でも、故障するとすぐには直らない。

 少なくとも交通量の多い幹線道路の交差点の信号だけは、故障したら即座に修理し、1時間以内に回復してくれないと大渋滞になるし、危険だ。とにかく、マレーシアの人々は急いで目的地に向かって驀進している。信号が休憩中であろうがなかろうが1mでも10cmでも先へ先へ進もうとする。四すくみ状態になって、一つの交差点を抜けるのに15分も20分もかかるとこがある。

 「交通警官が手信号で交通整理している交差点のほうが時間がかかるんだから、いくらかましじゃない」という説もあるけれど、進行方向によってはひじょうにスムーズということもあるのだから、悪いほうにばかり目を向けてはいけない。交通警官は排気ガスにまみれて、少しでも交通を円滑にしようと一生懸命に職務を全うしているのだ。感謝しなくてはいけない。

 それよりも、郊外では、信号が稼働しているときよりも、信号機が眠っているときのほうがはるかにスムーズに流れていることが多いのには感心させられる。交差点を通るすべての車両の運転手が細心の注意を払って運転しているのだから事故はほとんどない。「今日は信号が休暇をとっているから、信号を無視して突っ走るバイク族も安心して走っているね」と気分が安らぐ。

 なぜ、故障した信号がすぐに修理されないのか、いろいろな理由が考えられる。ふつうは信号機の会社が定期的に巡回して交通量に少ない時間帯にメンテナンスしたり、巡回中の警察官が故障を見つけると信号機の会社に緊急で修理を依頼する。信号機には「故障を見つけたらここに連絡してください」と電話番号が表示されているから、一般市民からの通報もOKだ。けれど、だれも、連絡しないのかも知れない。

 もう10年前になるけれど、クアラルンプールの幹線道路の信号はコンピューターによる集中管理で、交通量によって青信号、赤信号の時間を調整するという新聞発表があった。だけど、渋滞は変わらなかった。警官の手信号も相変わらずだった。ただ、信号をコンピューターによる集中管理にしたら、故障は一目瞭然、即時に対応できるはずだった。それでも、結局、なにも変わらなかったのは、どうしてなんだだろう。

 深夜から早朝にかけて、車両に踏みつぶされる信号機もある。故障もいれたら、修理工の数の問題もあって修理作業はなかなか追いつかないのだろうか。

 今日も休暇中の信号を通過した。三日目ともなるとほかの車両もなれてしまったのだろう。日を追ってスムーズになっていく。人は進化するもんだ。
 

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本稿は日馬プレス第283号(2004年10月1日)に掲載されたものです。