暴走する軽自動車、高級自動車

 
 日本では軽自動車は主として狭い町中を走る女性や商店やセールスマンにたちに愛用されている。相対的に安全運転で、ときには円滑な交通に支障を来すほど異常に丁寧な運転をする人がいる。

 今、マレーシアで軽自動車が売れている。乗用車タイプから箱型タイプ、お洒落な新型車がでて人気を博している。狭い場所でも走行できるし、駐車もしやすい。おまけに、普通自動車ばりにスピードもでる。だから、この国では女性やセールス向けというより、老若男女すべての階層に利用されている。

 ということは、「軽自動車よお前もか!」。交通異常の一員として立派に存在している。ハイウェイをスキーのスラロームのように車線を右にいったり左にいったり、昔、「直角くん」という漫画があったけれど、直角くん並みに小型の特性を生かしてすばやく動き回っている。よく見ると運転しているのは四十がらみのおじさんだったり、二十代の女性だったり。

 南北ハイウェイを時速130km以上で走っている軽乗用車を見ると、その勇気に敬服する。「わたしにはまねができない」ろ思わず自分の臆病さに頭を垂れてしまう。暴走する軽自動車のウインドウに縫いぐるみの人形が飾ってあるのを見ると、人間の心の奥行きの深さに感銘を受けてしまう。「すごい!」、とにかく「すごい!」。

 日本ではベンツなど高級車の排気量の大きい車種の運転は、車両の持ち主がいかにも経済力があり社会的地位があるということを意識して、周囲の車の流れとは関係なく、ゆったりと安全に走っている。これは、ちょっと危険な職種の人達や新興成金の人達も同じだ。

 けれど、この国では、この国を走行するシンガポールナンバーの高級車もなにはさておき飛ばす。運転手付きであっても、オーナーが運転していても飛ばす。高級車ほど飛ばす。わたしたち庶民は飛ばせば「スピード違反だ」と言われて罰金等を払うことになる。取締りの警官に止められている高級車はあまり見ないのはなぜだろう。あまりにも早すぎて、スピード計測機の能力の限界を越えているのかも知れないし、取締りに当たっている警官も呆気にとられているあいだに通りすぎてしまうのかも知れない。

 狭い道の真ん中に堂々と駐車して、後続の車両を待たせるのも平気だ。ほんの50cm左側に寄ってくれれば後続車は通れるのに平気だ。うっかりクラクションを鳴らすとにらまれる。

 高級車は富と権力の象徴。ただ、富と権力をどうやって誇示するかは人によって異なる。謙虚になる人もいれば、傲慢になる人もいる。道路交通では謙虚でも、日本の高級官僚たちの中には傲慢そのものの人がいる。ちょっと前までは外務省のお役人、最近では厚生労働省の役人や法務省出入国管理局の役人、昔も今も現場の警察官、中の一部の人達が傲慢さ故に犯罪スレスレの行為をしている。

 高級自動車の暴走なんて、日本の一部の官僚の横暴よりましかも知れない。

 

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本稿は日馬プレス第284号(2004年10月16日)に掲載されたものです。