ボルネオ研究(1)

 


 

 ボルネオと聞いて、人はなにをイメージするだろうか。密林の熱帯ジャングル?茶褐色の大河?このボルネオの熱帯雨林は1億数千万年の歴史があり、そこには実に多種多様で複雑な生態系の上に動植物が棲息しているという魅力のある地で、自然研究の宝庫となっている。ボルネオはマレーシア(サバ州とサラワク州)、インドネシア、ブルネイの3国からなり、世界で3番目に大きな島だ。
今回から3回にわたるサイト紹介では、ボルネオ関連を一挙にまとめてみた。まず望月雅彦氏による個人研究発表用の「ボルネオ研究」 http://www.borneo.ac/(日本語)では、サバ、サラワク州と日本人の関係史、特に移民、第二次大戦期に関する資料が豊富で、古書のデータベースも揃っており、ボルネオ関連調査には利用価値が高いだろう。またボルネオ関係文献史や書籍紹介のみではなく、広く東南アジアをテーマとし、分野も人文ばかりに偏らず自然分野についても紹介している。今後はブルネイ、カリマンタンも視野に入れ、サイトのさらなる充実を目指しているそうだ。
岩永友宏氏のサイト「フォトグラファー 岩永友宏ホームページ」http://homepage2.nifty.com/tck/ (日本語)も見逃せない。現在フリーランスの写真家として活躍し、著書に「戦うカレン民族_ビルマ辺境訪問記」や「先住民族プナン_ボルネオ最期の狩人」がある。まずは、メインから入った時に目に飛び込んでくる写真のすばらしさを見て欲しいと思う。プロの洗練さがうかがえるだろう。サラワク州の原住民プナン、ビルマとタイ国境にいるカレン族、そしてカナダエスキモーのイヌイットと、3種のカテゴリーに別れており、これらは展示会や各書籍になって出版されているもので、このサイトでは、その筋書きが覗くことができるようになっている。
「辺境の民というカテゴリーを自ら設定して写真を撮っているわけではないのに、なぜかいつも対象が山岳少数民族や先住民になってしまうのは、きっと自分の奥深くに元来ある欲求なのだろう」と語っている岩永氏は、実際に原住民らとともに数ヶ月生活し、見て、聞いて、感じた体験ルポをさっぱりとしたライティングタッチで書いている。

サラワク州を最初に統治したのはイギリス人探検家のジェームス・ブルック。ブルックがこの地に現れるはるか以前から、先住民は森の恵みに依拠した伝統的な生活を送っていた。プナンは神秘的な世界観のもと、自然に畏怖の念を持ち精霊信仰が強かった民族だ。森は創造神がつくったもので、プナンは森に消えた妖精の変わり身だという伝説が残っている。自然と共生して敬う信仰心は、かつての日本人の自然信仰と似ているところがあるのではないだろうか?自然への信仰心は、厳しい自然が生活に密着している証だ。近年は政府による定住化政策が進み、そして一方で森林伐採や土地開発がプナンの生活圏にも及び、プナン民族の人口はおよそ1万人ほどと考えられている。しかし今も狩猟と採取のみで生活する者は300人程度まで減ってしまっているらしい。急激な近代化が進む中、気高い森の狩人たちは徐々にアイデンティティーを喪失し、社会の底辺に組み込まれようとしているのは確かだ。希少価値ある純粋な原住民が姿を消し、文字を持たない彼らは、こうして第三者が報告書にまとめた文献のみが頼りという日がくるのだろうか。
 

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本稿は日馬プレス第278号(2004年7月16日)に掲載されたものです。