Appleが最新の「M5」チップを搭載した「iPad Pro」、そして「M4」チップを採用した新しい「iPad Air 11(2026)」を発表したとき、筆者の反応はやや冷めたものだった。またしてもお決まりのiPadが、単に処理速度を上げて登場しただけだろう。正直なところ、ここ数年「Pro」の名を冠するタブレットに対しては、豪華で極めて高速ではあるものの、オーバースペックで不必要なデバイスだという印象を抱き続けてきたからだ。
メインマシンとしての可能性を秘めたiPad Pro
しかし、「iPadOS 26」をインストールした13インチのiPad Proを日常的に使い始めると、その認識は徐々に変化していった。Magic Keyboardを装着し、仕事用のノートPCのように扱ってみる。果たしてiPadは、ついにMacに取って代わり、メインコンピューターとして機能する段階に到達したのだろうか。事実、今筆者はこの記事をiPad Pro上で執筆している。
驚くべきことに、普段愛用しているノートPCよりも優れていると感じる点すらある。FaceIDによるサインインはシームレスで一切のストレスがない。鮮明で美しいOLEDタッチスクリーンは映画鑑賞に最適なだけでなく、総合的な視覚体験において現行のどのMacをも凌駕している。そして何より、M5プロセッサーの圧倒的なスピードだ。
この劇的な変化の背景には、間違いなくiPadOS 26の存在がある。旧型の低速なiPadでも動作するOSではあるが、M5チップの恩恵を受けた13インチiPad Proでのマルチタスク性能はまさに別次元だ。複数のウィンドウを行き来する作業が、これまでになく自然に感じられる。
圧倒的な処理能力とハードウェアの進化
性能面での進化は数値にも明確に表れている。Geekbench 6のベンチマークテストにおいて、10コアのM5チップはマルチコアで「1万6116」という驚異的なスコアを叩き出した。これは、2024年モデルのハイエンドM4搭載iPad Pro(1万4672)から約10%、2025年初頭に発売されたM3搭載iPad Air(1万1643)と比較すると実に38%もの高速化を意味する。
Appleは今回、新しい「CX1」および「N1」モデムとワイヤレスチップを採用し、より高速な5G通信とWi-Fi 7、Bluetooth 6への対応を実現した。一方で、筐体のサイズ、厚み、重量、カメラ性能、そして「Apple Pencil Pro」への対応といった基本仕様は据え置かれている。本体はより高速な充電に対応したものの、高速充電器自体は同梱されていない。フルに性能を発揮するには、別売りのアダプターか手持ちの高出力充電器を用意する必要がある。
ストレージとメモリの構成も従来通り、上位モデルでより強力なスペックが与えられている。256GBと512GBモデルは12GBのRAMと9コアCPU・10コアGPUを搭載するのに対し、今回テストした1TBモデルおよび2TBモデルは16GBのRAMと10コアCPU・10コアGPUを備える。価格は11インチ(256GB)が999ドル(日本では16万8800円)、13インチが1299ドル(同21万8800円)からと依然として高価で、ストレージやアクセサリーをいくつか追加すればあっという間に2000ドル(約30万円)に達してしまう。
堅実なアップデートを遂げたiPad Air(2026)
では、同時期にリリースされた第8世代となる「iPad Air 11(2026)」はどうだろうか。こちらは真の革命というよりも、堅実な「必須のアップデート」と呼ぶのが相応しい。
最大のトピックはM4チップの搭載によるパフォーマンスの大幅な底上げと、Wi-Fi 7への対応だ。高品質なアルミニウムのユニボディはAppleらしさに溢れ、手によく馴染む。重量はWi-Fiモデルで464グラム、セルラーモデルで465グラムと数グラム増加したが、携帯性の高さは健在だ。ディスプレイのベゼルは比較的太めだが、これは意図しない画面へのタッチ操作を防ぐ実用的な側面もある。カラーバリエーションはスペースグレイ、パープル、ブルー、そして上品なベージュ系のスターライトの4色が用意されている。
バッテリー駆動時間、スピーカーの音質、IPSディスプレイ、カメラ性能など、それ以外の要素は驚くほど変わっていない。防塵防水性能も備えていないため、水しぶき程度なら問題ないが過信は禁物だ。高価な上位モデルの価格がわずかに引き下げられたことは朗報だが、OLED画面の美しさや大容量ストレージを求めるユーザーにとっては、Androidタブレットの方が依然として安価な選択肢として映るだろう。とはいえ、クラウドストレージを活用し、IPS液晶に納得できるユーザーであれば、この新しいiPad Airは適正な価格で十分すぎるパワーを提供してくれる。
依然として立ちはだかるソフトウェアの壁
ハードウェアの進化が目覚ましい一方で、ソフトウェアにはまだ課題が残されている。iPadOS 26は、6月にAppleがプレビューしたMacライクなウィンドウシステムを実装しており、アプリ上部のメニューバーも想像以上に機能的だ。作業を中断されるような感覚は確実に減った。
しかし、ブラウザーの扱いには今なお違和感が付きまとっている。iOSやiPadOSは、Macであればブラウザー上で完結するような作業を個別のアプリに切り出して実行させようとする傾向が強い。Googleのクラウドツール群などを使用した特定のワークフローにおいて、iPadではどうにもスムーズさに欠ける瞬間があるのだ。仕事用ツールとしてMacの完全な代替になるかどうかは、ユーザーが日常的にどのアプリに依存しているかに大きく左右される。
MacBook Pro、Vision Pro、そしてiPad Pro。象徴的なのは、これら3つの主要な製品ラインで最新チップへのアップデートが同時に行われたことだ。Vision Proが未来のコンピューター、MacBook Proが伝統的なコンピューターだとすれば、現在のiPad Proは筆者にとってメインコンピューターになる「一歩手前」の位置につけている。今後のiPad Proにはブラウザーの抜本的な刷新を強く求めたい。あるいは、2026年内に登場すると噂されるタッチスクリーン搭載のMacこそが、iPadOSの優れた要素を取り入れて真の完成形を提示してくれるのかもしれない。