高校野球界でその名を轟かせた速球派左腕が、悔しさを胸に新たなステージでの飛躍を誓う一方で、海の向こうメジャーリーグでは名門球団がチーム編成の苦境に立たされている。これから始まる春に向けた、日米それぞれの野球現場の情景を追う。
「頼られるエース」へ、戦国東都での再起
昨年のドラフト指名漏れという現実を乗り越え、仙台育英の最速151キロ左腕、仁田陽翔(18)が新たな決断を下した。進学先は東都大学リーグ2部の立正大。設備や生活環境を含め、自身が最も成長できる場所として選んだこの地で、4年後のプロ入りという明るい未来を見据えている。
仁田の高校3年間は、常に葛藤の中にあったと言えるだろう。湯田統真、高橋煌稀と共に「150キロトリオ」の一角として注目を浴び、春の東北大会決勝では151キロを、甲子園でも149キロをマークした。しかし、本人の心は晴れなかった。制球難という課題が常につきまとい、「制球がいい試合などほとんどなかった」と振り返る。自らピンチを招いては降板し、チームメートに助けられる展開。「助けてもらってばかりだな」という悔しさが、日を追うごとに募っていたのだ。
だからこそ、大学での目標は明確だ。「頼られる投手を目指したい」。色紙には「最多奪三振」と力強く記した。ただ速いだけではない。ストライクゾーンで勝負し、試合を作れる投手になること。かつて自信を持てなかった150キロ超の直球を真の武器に変え、納得のいく投球を積み重ねる覚悟だ。
かつての仲間、そして4年後の未来へ
立正大が所属する東都リーグは実力が拮抗し、「戦国東都」と呼ばれる厳しい環境だ。そこには、かつての盟友たちも待っている。中央大(1部)に進む橋本航河や、専修大(2部)に進む住石孝雄ら、仙台育英で苦楽を共にした仲間との対戦も現実味を帯びる。「左と左なのでうまくやれるかな。打たせる気はないです」と、仁田はいたずらっぽく笑みを浮かべた。高校時代の悔いも、指名漏れの無念も全て糧にし、4年後まで一直線に突き進む。
レッドソックスにのしかかる「2026年の試練」
日本の若武者が着実な成長を期する一方で、メジャーリーグのボストン・レッドソックスは2026年シーズン開幕を目前に控え、不透明なチーム状況に頭を抱えている。
スプリングトレーニング開始まで2週間を切った現在も、内野の陣容が固まっていないのだ。アレックス・ブレグマンの予期せぬFA流出がチーム構想を根本から狂わせ、球団はいまだにその穴を埋める解決策を見いだせていない。トレバー・ストーリーが遊撃を、ウィルソン・コントレラスとトリストン・カサスが一塁をシェアする布陣は固まっているものの、二塁と三塁は依然として空白地帯となっている。
苦肉の策か、若手への賭けか
MLBインサイダーのジョン・ヘイマン氏が報じたところによれば、レッドソックスはニコ・ホーナーやアイザック・パレデスらの獲得を模索したものの、トレード成立の可能性は低いという。また、贅沢税の基準額を超過している財政事情もあり、大型補強もままならない。
そこで浮上しているのが、マルセロ・メイヤーを三塁に据え、二塁にはロミー・ゴンザレスとデビッド・ハミルトンをプラトーン起用するというプランだ。しかし、これはあまりにリスクが高い。メイヤーはMLB経験がわずか1年で、昨季も故障に苦しんだ。一方、ハミルトンは2024年の好調から一転、昨季はリーグ最低レベルの打撃成績に低迷しており、復調は不透明だ。キャリアハイを記録したゴンザレスにしても、その数字を再現できる保証はない。
ブレグマンの後釜という重責を経験の浅いメイヤーに託し、計算の立たない二塁手たちに賭ける──。この「イチかバチか」の編成が失敗に終われば、その負担は全て外野陣の攻撃力にのしかかることになるだろう。自身を磨き上げるために大学を選んだ仁田とは対照的に、レッドソックスは不安定な土台のまま、厳しい春を迎えようとしている。